ドイツの有力企業の買収により、いきなり欧州市場で主役級に躍り出た新日鉄住金エンジニアリング。それが導火線となって、ごみ処理プラントの欧州の勢力図は塗り替わろうとしている。技術力で世界の先頭集団に入る日本メーカーの動向を探った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 新日鉄住金エンジニアリングは、3月24日にドイツのフィジア・バブコック・エンヴァイラメント(FBE)の全株式を、親会社のイタリアの大手ゼネコンから約190億円で取得すると電撃発表した。

 これまで、国内が中心だった新日鉄住金エンジニアリングだが、欧州でトップ集団に入る環境プラント・エンジニアリング会社のM&Aに乗り出したことにより、欧州での「ごみ処理プラント」の競争がヒートアップしてきた。

 FBEは、前身となった企業の創業が1824年という老舗で、欧州を中心に世界中で500件以上のごみ処理プラントの設計・建設などを手掛けている。2012年度の連結売上高は184億円であり、数年前からひっそり売りに出されていた銘柄でもあった。

 買い手となった新日鉄住金エンジニアリングは、12年度の連結売上高は3030億円で、経常利益は181億円である。今回の買収に投じた約190億円という金額はかなりの挑戦といえる。しかも、海外の有力企業を傘下に組み込むこと自体が初めてなのである。

 長らくこの案件にかかりきりで、ドイツと日本を行ったり来たりしていた谷岡孝一経営企画部長も、「一発逆転のシナリオ」であることを認める。年度末に間に合わせるべく発表を急いでしまったが、4月末にはドイツ当局からの承認も下り、5月の連休明けにはクロージングを行うところまできた。

 実は、FBEを買収するまで、新日鉄住金エンジニアリングは世界で主流の「ストーカ炉」(ストーカと呼ぶ火格子を、段差をつけて並べ、その上でごみを転がしながら800度以上で焼却する構造)を持っていなかった。