ブラックボックス化を
改善することが重要に

図1 レガシー化とブラックボックス化の“負のスパイラル”
拡大画像表示

 メインフレーム上にある基幹システムの多くは、相当昔から使われている。中には30年間使われ続けているプログラムもある。当然、これまでに何度も手直しされてきている。小幅な手直しは仕様書には反映されないこともある。それを繰り返してきたことで、仕様書とプログラムの実態がかけ離れているケースは多い。ひどい場合は、仕様書そのものが存在しないケースもある。これが“ブラックボックス化”である(図1)。

「ブラックボックス化されたプログラムは簡単には修正できません。どう動いているのか、何のために動いているのかがわからないプログラムも存在します。そんな状態では、怖くて手が付けられないのは当然です」と栗原氏は指摘する。ビジネスの変化に合わせて機能の追加が必要になったときに、情報システム部門から“難しい”という答えが返ってきたら、ブラックボックス化の兆候を疑うべきだろう。根は深いのである。

図2 レガシーマイグレーション失敗の典型例
拡大画像表示

 最近では古くなったプログラムを最新のコンピュータ環境に移行させることも増えてきた。「レガシーマイグレーション」と呼ばれる。オープンシステムやクラウド環境への移行もその一つだ。確かに、プラットフォームを変えることで性能が上がるだけでなく、全体のランニングコストが抑えられるケースも多い。しかし栗原氏は「安易なマイグレーションは問題を複雑化するだけ」と警鐘を鳴らす。

 マイグレーションしてもプログラムがそのままであればブラックボックス化は改善されない。当然、期待されるように柔軟なシステムにはなりようがない。栗原氏は「いつの間にかプラットフォームを変えること自体が目的になってしまい、ブラックボックスはそのままというプロジェクトもある」と言う(図2)。

徹底した現状分析が
次への展望をもたらす

 では、どうしたらブラックボックス化を解消し、変化に柔軟に対応できるシステムを手に入れることができるのか。栗原氏は「変化に対応できないシステムを把握したら、現状を徹底的に分析して棚卸するのがポイント」と説く。当然、人手も費用もそれなりにかかる。目に見える成果が出にくい地道な作業だけに、これまで情報システム部門も手をつけることができなかったのが実状だろう。しかし、そこを避けていては次の展望が見えてこない。

 栗原氏は「現代のシステムの価値は、迅速な意思決定と柔軟なコラボレーションがポイントです。それができない硬直化したシステムを使っていることの機会損失は計り知れない」と指摘する。「システムが古いから機能追加ができない、と慣らされてしまっている部分はないでしょうか。これでは永遠に課題は解決できないし、ITによって新しいメリットを享受することもできません」と栗原氏は強調する。ブラックボックスの現状を把握した上でマイグレーションに取り組むことで、最適な対応策も明確になり、経営の貢献度が高いシステムになる。

 マイグレーションの真の価値である変化に対応できるシステムを手に入れるには、ブラックボックス化の解消が大前提となる。経営者自身がブラックボックスの存在を認識することが、価値あるシステム刷新への大きな一歩となる。自社のシステムがブラックボックス化していないか、常に感度を上げておくことが重要だろう。