あらゆる労働力が足りない!!
幕を開けた“人材獲得”戦争

 今年3月以降、ゼンショーホールディングスが展開する牛丼チェーン、すき家の店舗で、休業や営業時間の短縮が大量発生した。

 原因は、その前月から提供を始めた「牛すき鍋定食」。仕込みから調理、配膳まで、通常の牛丼とは比較にならない仕事量に耐えられなくなったアルバイト従業員が、次々と辞めたことで、一気に人手不足に陥ってしまったのだ。

 もともと、すき家では「ワンオペ(ワンオペレーション)」と呼ばれる1人勤務体制が敷かれ、外食チェーンの中でも激務な〝ブラック〟職場として、主にインターネット上で評判が良くなかった。

 ゼンショー幹部は「すき家個別の問題ではなく、若年労働人口の減少による影響が大きい」と説明する。が、「“ブラック”な勤務環境を棚に上げ、人口減少に原因をすり替えている」と非難囂々々だ。

 こうした事態をある大手外食チェーン幹部は、「若い世代の人口が減って、他業種ともバイトの奪い合いが熾烈になっている。完全な売り手市場の中で、すき家の労働環境はわれわれから見ても過酷だったため、真っ先に獲得競争に敗れてしまった」と解説する。

 確かにバイトの獲得競争は熾烈だ。リクルートジョブズの調査では、三大都市圏におけるバイトの平均時給は、5月現在、11ヵ月連続で前年同月比プラス。別の外食チェーン大手では、「1人当たりの採用単価は、1年間で1.5倍になった」という。

 すき家も、深夜の時給は現在、最高1500円と、一昔前の水準から見れば“破格”の待遇だ。

 それでも「時給以外に、おしゃれ、専門的といった何かしらの付加価値がないと外食にはバイトが集まらない」と別の外食チェーン大手の担当者は語る。