こうしたM&Aやグローバル化の推進に当たっての経営層と現場からの要請を踏まえ、このたびワコールは、情報システムをハイブリッド環境へと移行し、これまで別々に運用されていた複数のデータベースをオラクルの高速データベース・マシンOracle Exadataに一元化する決断を下した。他社製品と比較した結果、Oracle Exadataを選択した理由は主に次の3点だと大西課長は語る。

「基幹系と情報系が共存できて、安定した相互運用ができるのが最大の魅力です。2つ目はバッチ処理やオンライン検索、自由検索、対応データ抽出など、さまざまな分析要請に対応できること。そして3つ目は、拡張性、信頼性が高いことです。将来的な業務システムの拡張に対して、リソース面、価格面ともに柔軟に対応できて、サービスレベルとセキュリティレベルが維持向上できるという条件をすべて満たしているのがオラクルのExadataでした」

 これまで、基幹系と情報系のシステムはそれぞれ独立させて運用させるのがIT業界の常識であった。小さなデータを頻繁に読み書きする基幹系のオンライントランザクション処理(OLTP)と、大量データを一気に読み込み検索する情報系、どちらにも最適なシステムが構築できなかったためだ。ところが、Oracle Exadataでは、スマート・スキャンやExadata Storage Indexといった新機能をうまく組み合わせることで全件検索を圧倒的に高速化し、双方のシステムをOracle Exadataで統合することに成功。これにより、より安定した運用と保守運用コストの大幅な削減を実現できるのだ。

 また、拡張性はビジネスにおいて重要なポイントになってくる。Oracle Exadataなら、ビジネスの規模やタイミング、ニーズの変化に合わせて、小規模から大規模構成まで簡単かつシームレスに拡張することができる。これにより、必ずしも最初にまとめて投資する必要はなく、企業や事業の規模に合わせた投資を無駄なくすることができるのだ。 

最大のメリットは
コスト削減と時間短縮

 今回のプロジェクトの最大のメリットは、コスト削減の実現だ。ワコールは2005年からハードウエアやサーバーのアウトソーシングに取り組んでおり、保守運用は外部のデータセンターが行っていた。移行に伴う一時的なコスト増はあるものの、2015年からは新旧の並行稼働を脱し、旧環境の保守運用コストがなくなることで、年間数千万円単位の大幅なコストダウンが実現できる見通しだ。

「2016年ころには投資額を回収し、コスト削減効果が享受できる見込みです」(大西課長)

 もちろん、それ以外の魅力もある。例えば、性能面では一連の処理が高速化し、平均30~40%の時間短縮を実現する。最大の課題であった売上データを仕訳する夜間バッチ処理時間は半分以下に短縮された。さらに、汎用検索ツールの処理速度が向上、レポート作成業務において、一例では、従来3カ月分のデータ量までしか検索できなかったものが、1年分のデータを1度に検索することが可能となった。さらに、経理システムでも平均30~40パーセントの時間短縮を実現し、業務効率の大幅な向上につながっている。

 現在は統合プロジェクトを推進中で、2014年末には約8割がハイブリッド環境への移行を完了する予定である。これだけの規模のシステム刷新をスピーディかつ安全に運び、費用と時間という貴重なリソースの有効活用の実現が、経営陣に投資を決断させた最大のポイントであったことは間違いないようだ。