国立がん研究センターがん対策情報センターの統計によると、2010年に新たにがんと診断された人は約80万人。いまや、日本人の2人にひとりが、がんになる時代で、決して他人事ではない病気だ。

 がんは、再発・転移を繰り返すこともあり、その他の病気に比べて治療費が高額になる傾向が強い。そのため、万一に備えて民間生保会社の「がん保険」に加入している人も多いのではないだろうか。

 同じ民間保険の疾病保険でも、医療保険が幅広い病気やケガをカバーするものであるのに対して、がん保険は「がん」の保障に特化した商品だ。保障範囲をがんに絞っているので、契約者が納める保険料は比較的安く、はじめてがんと診断されたときには、100万円など、まとまった一時金が支払われるのが特徴だ。

 だが、「がんになったのに、がん保険の給付金がもらえない」などのトラブルも報告されており、こじれると裁判に発展するケースもある。

 そのひとつが、がん保険の診断給付金をめぐるトラブルだ。

上皮内新生物と
悪性新生物はどう違う?

 がんは、遺伝子(DNA)の異常によって起こる病気だ。人の体は、約60兆個の細胞でできており、日々新しい細胞に入れ替わっている。それぞれの細胞には、設計図となるDNAがあり、細胞が入れ替わるときには設計図通りに複製されて、新しい細胞に伝えられる仕組みになっている。

 しかし、外部からの刺激など何らかの理由で、DNAが損傷することがある。通常は、DNAが損傷しても、細胞が自らその傷を修復したり、異常な細胞は取り除かれたりして、正常な状態が保たれるようになっている。しかし、損傷が大きかったり、異常な細胞の数が増えすぎると、修復が追いつかなくなる。

 DNAに損傷を受けた細胞が無制限に増えたり、体のほかの部位に転移するなどの性質をもってしまった細胞が増えていくと、体に悪影響を与える悪性腫瘍となる。これが、がんが発生するメカニズムだ。