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山田厚史の「世界かわら版」

メディアが朝日は「非国民」「廃刊」と叫ぶとき――
確実に近づくマスメディアの死

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第70回】 2014年10月9日
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 従軍慰安婦問題の検証から始まり、池上コラム不掲載が炎を煽り、福島原発事故の吉田調書報道で社長が平謝りした朝日新聞問題。新聞や週刊誌に「廃刊」「不買」の活字が躍り、轟轟たる朝日批判がメディアをにぎわせた。興奮は収まりつつあるが、一連の騒ぎからメディアを巡る危うさが見えてきた。異なる言論を封殺しようという動きが公然化し、慰安婦報道に携わった元記者の再就職先に「辞めさせろ」と迫る脅迫文が届く時代だ。

記者本人ばかりか家族まで

 「非国民」という罵声で、言論や人権を抑圧したかつてのような空気が今の日本に広がりつつある。

 朝日新聞に在籍した二人の記者が実名で攻撃を受けている。元慰安婦の証言を記事にした植村隆元記者は、今年4月から神戸松蔭女子学院大学に就職することになっていたが、週刊文春2月6日号が「“慰安婦捏造”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」と書いたことで、ネットで同大学への抗議を呼びかける運動が起こり、大学は雇用契約を取り消した。

 報道によると、植村氏の住所や電話番号、高校生の長女の写真などがネットに公開された。嫌がらせの電話や「自殺するまで追い込むしかない」などネットで中傷されている。

 4月から札幌市の北星学園大の非常勤講師を務めているが、大学に「辞めさせないと学生を痛めつける」などという脅迫状が2度届いた。電話やファックスによる攻撃は後を絶たないという。

 帝塚山学院大の教授だった清田治史氏も退職に追い込まれた。「慰安婦狩りをした」と証言した吉田清治氏を記事にした当事者として標的になっている。脅迫文が大学に届き、清田氏は退職。学生の被害を恐れたのかもしれないが、脅しに屈した判断は大学にふさわしい選択だったのだろうか。面倒事を避ける「事なかれ主義」とも受け取れる結末だった。

 北星大学は筋を通している。迫害に耐え日本で布教したキリスト教というバックボーンによるものかもしれないが、脅しに屈しない姿勢は見習うべきだろう。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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