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組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

失われた20年で大企業から“本当の商売人”が消滅!?
日本企業を覆う「お金を使えない病」

秋山進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]
【第5回】 2014年10月14日
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“お金を使った経験”のない取締役が飛びつく
安易なM&Aは悲惨な結果に

 皆さんのなかに、会社のお金を“どーん”と使った経験のある人はどのくらいいるだろうか。実は、かなり少ないのではないかと思う。さらに、「いま10億円使えるとしたら、何に使う?」(1億円でも5000万円でも構わないが)と聞かれて、即答できる人はいるだろうか。これまたほとんどいないと思う。

 一部の業種を除いて、日本企業のほとんどが、現在、“お金を使えない病”にかかっている。お金を稼ぐ人も、倹約する人もたくさんいるのだけども、“お金を使う人”がいないのである。明日の成果を得るためには、今日そのための準備をしなくてはならない。にもかかわらず、あらゆるレベルで無駄が削られ、お金を使う経験をせずに管理職、そして経営幹部になっていく。経験が乏しいと、何が生きたお金の使い方で、何が死に金かの区別さえつかない。実体験に基づいたお金を適切に使う技術を習得する機会がなかったのだから仕方がないとも言える。

 ここで言う、お金を使うとは、定常的な業務以外のところの、将来性のあるビジネスに“張ってみる”ことや、大きな投資で“賭けてみる”、世間の耳目を集めるプロモーションなどで“傾(かぶ)いてみる”ことだ。新しい事業や顧客の新しい欲望を生み出すためには、市場に新たな旗を立てるべく、何らかの形でお金を使っていかないとことには始まらない。

 ある大手企業の取締役には、事業の立ち上げや新商品開発、注目を浴びる仕事をした人が誰もいない。バブル崩壊後の20年は、後ろ向きの仕事や守りの事業展開が長かったために、既存事業を堅実に実行してきた人や管理系の人達ばかりが出世したのである。

 しかしあるとき、さすがに新規事業に乗り出さないとマズイということになり、巨額の予算をつけ事業開発担当役員を選任すると決めた。そこまでは良かったものの、どうしたら事業が生まれるか、何に投資すればよいか誰もわからないため、全員が担当役員になるのを嫌がった。事業開発担当役員というのは、ババ抜きの“ババ”のような存在になったのである。

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秋山 進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]

リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭。

著書に『「一体感」が会社を潰す』『それでも不祥事は起こる』『転職後、最初の1年にやるべきこと』『社長!それは「法律」問題です』『インディペンデント・コントラクター』『愛社精神ってなに?』などがある。


組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

日本には数多の組織があり、多くの人がその中に属しています。組織は、ある目的のために集まった人たちで成り立っているにも関わらず、一度“病”にかかれば、本来の目的を見失い、再起不能の状態へと陥ります。しかも怖いのが、組織の中の当人たちは、“病”の正体が分からないどころか、自分たちが“病”にかかっていることすら気づけない点です。

この連載では、日本の組織の成長を阻害している「組織の病気」を症例を挙げて紹介。コンプライアンスの観点から多くの企業を見てきた筆者が考える治療法も提示します。

「組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進」

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