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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

意表を突く「追加緩和」に隠された意図
さらなる円安、日銀はどこまで下落を狙うのか
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]
【第153回】 2014年11月5日
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 意表を突いて日銀が10月31日に追加緩和に打って出た。FRBが10月29日に量的緩和政策第3弾(QE3)の終了を発表した直後だっただけに、グローバルには今後は日銀発で超緩和が継続すると印象付けた。

 思い出してほしいのは、2013年5月に当時のバーナンキFRB議長がテーパリングを開始する意図を伝えて、世界中の株価が下がった経験である。新興国通貨は下落して、過剰流動性の時代の終わりを予感させた。

 今回、FRBが量的緩和のペースを止めることを決定したことは、仮に日銀が追加緩和をしなければ、世界的な過剰流動性の拡大に打ち止め感を与えたことだろう。

 日銀が過剰流動性を増やすことは、投機マネーの資金調達先をドルから円へとシフトさせるだろうと想像させる。それが、今後予想されるドル高・円安の期待形成効果である。なお、もう1つの中央銀行であるECBも、11月6日に理事会を控えている。ユーロドルは、ECBの緩和拡大を催促するようにユーロ下落に動いている。

消費者物価2%を
本当に実現するつもりか!

 今回、日銀が追加緩和を実施した理由は、政治的には12月の消費税増税の判断を後押しすることが目的だ。もう1つ、消費者物価の1%割れを回避する目的も重要だ。

 すなわち、為替レートが今以上に円安にならなければ、物価上昇圧力は減衰し、2014年10・11月の消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比伸び率は1.0%を割り込んでしまうところだった。黒田総裁は、7月の記者会見で消費者物価は1%を割り込まないという見立てを披露し、それが今回の緩和の伏線になった。

 黒田総裁の量的・質的金融緩和の重要な影響力は、期待形成にある。従来から、見通しの達成に「必要があれば躊躇なく(金融緩和の)調整を行う」と繰り返してきた。今回は、物価見通しの達成を2015年度内に実行できるかどうかという展望において、リスクが高まってきたために、1%割れさせないための調整を行ったかたちだ。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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