「まるで(NTTに)光ファイバー時代のシェア7~8割を約束したようなものだ。我々(競争事業者)には、NTTに対抗する術(すべ)がなくなった」――。
総務大臣の諮問機関「情報通信審議会」が27日にまとめた答申書「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方について」に対して、KDDIやソフトバンクといった競争事業者が怨嗟の声をあげている。NTT東日本とNTT西日本が3月からサービスを開始した次世代通信網(NGN、「フレッツ光ネクスト」)の開放ルールが不十分なものにとどまり、公正な競争が望めないというのだ。総務省やその審議会は、なぜ、そんないい加減な裁きをしてしまったのだろうか。
NGNと光電話を開放するも
NTTに有利なルール
答申書「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方について」は、NTT東西が設備をほぼ独占していながら開放ルールのなかった光電話サービスと、両社が3月から新たに始めたフレッツ光ネクストについて、それぞれを、KDDIやソフトバンクといった競争事業者が同様のサービスを提供できるよう、NTTに設備を開放させるルールの新設を求めたものである。総務省と審議会は、これらの通信網を敷設する管路の多くが、1985年の民営化以前の国営公社時代に、独占利潤で整備したものである点などを勘案、今回のルール整備が不可欠と判断した。実際、固定電話やADSLでは、この種の開放ルールが整備されている。
自前で投資をしなくても、ライバルの設備を賃借できるのだから、KDDIやソフトバンクは大歓迎しそうなものだが、現実はまったく逆である。せっかくのルール整備にもかかわらず、両社は「一戸建て住宅、事業所向けの市場で、現状(約8割)を上回るシェア獲得を、NTTに約束したようなもの。曲がりなりにも我々が戦えるのは、市場規模の劣るマンション市場(NTTのシェアが6割程度)だけ。とても勝負にならない」(KDDI)とあからさまに不満を表明している。
こうした不満の第一の原因は、総務省と審議会が、数年越しの懸案だった“8分岐ルール”の導入を今回も見送ったことにある。8分岐ルールというのは、電話局の局舎から、一戸建て住宅・事業所のすぐそばまで、8回線分の光ファイバーを束ねた1芯という単位で敷設される光ファイバー網を、1回線ごとにばらして賃借できるようにすることをいう。このようにばらせば、1芯分のユーザーを獲得できるメドがなくても、採算にのるサービスが可能になるとして、競争事業者は数年前から解禁を要求し続けていた。