家庭で簡単にできる脳疾患リスク検査をご紹介しよう。片足立ちが、それ。昨年末に報告された京都大学附属のゲノム医学センターによる研究から。

 同センターの田原康玄准教授らのグループは、遺伝子情報から疾患リスクを読み取り、診断に役立てる研究を続けている。今回は、表に現れる現象から疾患リスクを知る方法を検討した。

 本研究では平均年齢67歳の男女(男性546人、女性841人)を対象に、両目を開いたまま片足立ちをしてもらい、その時間を計測。データは2回行ったうち、長時間続いた方を採用した。また、参加者はMRIで脳検査を実施している。

 その結果、片足立ちを20秒以上続けられない人は、自覚症状が全くなくても、脳の深い所にある細い血管が詰まる「無症候性ラクナ梗塞」や、ごく小さな脳出血病変を発症している可能性が高いことが明らかになったのだ。

 具体的には、20秒以上片足立ちができなかった人のうち、ラクナ梗塞巣が二つ以上見つかった人が34.5%、小さな脳出血二つ以上では30%だった。病変が見つかった人の全体の傾向として、高齢で高血圧や動脈硬化が進行していたという特徴はあるが、その影響を排除しても、片足立ちの時間の短さが疾患と関係していたのである。

 同時に行われた認知機能テストでも、片足立ち時間の短さと認知機能の低下が独立して関連していた。つまり、片足立ちで長くバランスをとれない人ほど、認知症を含む脳疾患の発症リスクが高いわけだ。田原准教授らは、片足立ち検査は脳疾患のごくごく初期を洗い出し、より詳細な検査をするべきかを決定する簡便な方法になるだろう、としている。

 昨今は脳ドックの利用が増え、無症候性の病変が見つかるケースも少なくない。その精度はありがたいが、脳に爆弾を抱え「いつ悪化するか?」という不安と過ごす毎日は、かなり憂鬱である。

 まず、簡単な片足立ち検査を日課にするのはどうだろう。自分の身体を意識すると、ついでに生活習慣も改善しようと前向きな気持ちになるかもしれない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)