長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第11回】 2015年2月12日 樋口直哉 [小説家・料理人]

“食”についても考察した長寿大国フランスの学者

※享年(数え年で表記)
イラスト/びごーじょうじ

 レヴィ=ストロースは世界で最も名が知られた文化人類学者だ。『悲しき熱帯』などの著作をはじめ、構造主義という思考方法を世界に広めるのにも貢献し、人類の知に多大なる影響を及ぼした。

 構造主義とはざっくりと言うと、人間を成立させているものを内部ではなく外部に求めようとするものだ。つまり、人間の思考や行動は内発的なものではなく、外部(自然や社会)との関係性で決定されているという考え方である。それゆえに彼はそれまで学問のなかで大きく取り上げられてこなかった“性”と“食”─―共に外部から異物を取り入れ、受け入れる行為─―を重要なテーマとして扱った。

 レヴィ=ストロースの大著『神話論理』は「生のものと、火にかけたもの」から始まる。これは調理の火をめぐる神話群を主題にしたもので、料理こそがまさしく人間を人間たらしめた、ということを証明するものだった。

 彼はこんなふうに書いている。

「料理は自然から文化への移行を示すのみならず、料理により、料理を通して、人間の条件がそのすべての属性を含めて定義されており、議論の余地なく最も自然であると思われる──死ぬことのような──属性ですらそこに含められているのである」

 彼は驚くべき長寿であり、しかも100歳で亡くなるまでその思考は衰えることがなかった。彼が“食”について関心を持ったことと、フランスの文化は無関係でないように思う。オランダ人は生きるために食べ、フランス人は食べるために生きるといわれるが、フランスの豊かな食文化が思考に与えた影響は大きいはずだ。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

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