長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第9回】 2014年12月11日 樋口直哉 [小説家・料理人]

殻を破る前のセミは美味!? 長寿の源は好奇心

※享年(数え年で表記)
イラスト/びごーじょうじ

 今でも広く読まれている『ファーブル昆虫記』はジャン=アンリ・ファーブルによる30年にも及ぶ観察記だ。ファーブルはかなりの長生きで、高い文学性を持つと言われるこの昆虫記を書き始めたのが55歳の時、63歳で再婚もして、晩年は体調を壊したが91歳まで生きた。

 意外なことにこの『ファーブル昆虫記』。日本以外の国での人気はそれほどないようだ。フランス生まれのファーブルだが、母国での知名度も非常に低い。世界各国で出版されている本も抄訳がほとんどで、日本のように幾種類も完訳が出版されている国はないそう。そもそも欧州人は日本人のように虫を飼うということをまずしない。小さなものを愛でる心を持つ日本人にファーブルは特別受け入れられたわけだ。

 ファーブルは普段、どんな食生活を送っていたのか。うかがい知ることのできる資料は少ないが、普段の食事は質素だったらしい。伝記に書かれている貧窮生活は後年に脚色されたものらしいが、つつましやかな暮らしが健康に寄与していた可能性はある。

 食事をしながらも観察を続けていた、といわれているファーブルの長寿の源は絶え間ない好奇心だ。『ファーブル昆虫記』のセミの章には興味深い記述がある。アリストテレスが殻を破る前のセミは美味だ、と書き記していることに触れ「『味わい極めて甘美なり』という食欲をそそる形容の言葉は本当に事実だろうか」とファーブルは真偽を確かめるべく実際に試食している。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

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