景気と株価は本来連動するものです。しかし歴史的には、「不況なのに株価が上がる」という事態が度々起こりました。その結果、何が起こったのでしょうか?現在の日本を思い浮かべながら、読み進めてください。
株価が永遠に上昇し続ける
ことはない
日本経済の「失われた20年」を引き起こしたのは、1989年の株価暴落に始まるバブル崩壊でした。同じ現象が、「オランダのチューリップ・バブル」「イギリスの南海バブル事件」、そして「1929年の世界恐慌」でも起こったのです。
第一次世界大戦で連合国を勝利に導き、しかも本国が戦場にならなかったアメリカ合衆国は空前の経済大国に成長し、世界最大の債権国になります。ヨーロッパ経済はまだ立ち直らず、米国からの輸出は好調でした。貿易黒字に加え、大戦中に買っておいたヨーロッパ諸国の戦時国債の償還(支払い)も始まり、大量の資金がニューヨークのウォール街に流れ込みます。
ウォール街の金融資本は、これらの資金を企業に低利で貸しつけます。企業の経営者は、工場の生産ラインなど設備投資に資金を投下します。
フォード自動車は、最初の庶民向け乗用車であるT型フォードを販売し、ゼネラル・エレクトリック社(GE)の冷蔵庫・洗濯機・ラジオが一般家庭に普及したのもこの時代です。日本では1960年代に始まった大量生産・大量消費社会が、1920年代のアメリカではすでに実現していたのです。
賃金も上昇し、庶民は家電やクルマを買い求め、株式や債券、土地に投資するようになりました。毎日の株価が主婦の話題になり、マスコミがこれを煽りました。
しかし、プロの投資家たち―銀行や証券会社にはわかっていたのです。株価が永遠に上昇し続けることはないということを……。