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三谷流構造的やわらか発想法

日本の桜は2度死んだ。迫る3度目の危機!

三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
【第109講】 2015年4月2日
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「花といえば梅」から「桜」に変えた嵯峨天皇。
予算1000億円の花見を催した豊臣秀吉

 日本では古来、花といえば「梅」でした(*1)。梅を珍重した中国に倣い、「花見」も梅の花を愛でる宴でした。それを「桜」に変えたのが、平安時代初期の嵯峨天皇(在位809~842年)でした。

 桜に心を奪われた嵯峨天皇は、812年、初めて「桜」の花見を公式に催しました。日本の独自文化(国風文化)の始まりの一つです。

 桜は日本を代表する花(*2となり、平安末期の西行法師が「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ」と歌うまでになりました。もちろん、ここでの花は桜のこと。「桜の下で死ぬ」ことを願った彼は実際、3月31日頃に亡くなりました。

〈葛飾北斎、1760~1849〉

 桜の花見は、晩年の豊臣秀吉が催した「醍醐の花見」で頂点を迎えます。(第32講『 非日常からの発想~大お花見パーティで磨かれる「おもてなしの心」と「自律性」参照)ホストである秀吉は、醍醐寺の諸堂を再建・建築し、三宝院庭園を造営し、近畿4ヵ国から集めた桜の銘木700本を境内に植えて、場を整えました。現在価値にして1000億円をかけた大宴会です。

 人々により愛されるサクラを目指して、日本の植木・造園職人たちは、新しい品種の開発に力を入れ続けました。今日はその栄枯盛衰の物語です。

日本のサクラは2度、死に絶えかけました。そして今、3度目の危機が。

多様化の後、ソメイヨシノ一色となった明治時代

〈オオシマザクラ〉

 サクラは突然変異体や交配種ができやすく、自然界だけでも数十種ものサクラが日本には存在します。原種としては、オオシマザクラにヤマザクラ、エドヒガン、カンヒザクラ、カスミザクラ、マメザクラなどが有名で「ヤマザクラ」と総称されます。

 そして職人たちが丹精こめて品種改良に励んだ結果が、ソメイヨシノ、カンザクラ、コヒガン、オオカンザクラなどの園芸品種です。サトザクラと呼ばれます。

 平安時代からの職人たちの努力の結果、江戸末期にはその数は250~300種に達しました。江戸時代、河川の整備に伴って護岸のために、土手にはサクラ(や柳)が植えられました。また、江戸中の武家屋敷や庭園が、色とりどりのサクラに彩られていました。

 しかしその姿は、それから数十年で、大きく変わってしまいました。まずは大ヒット商品、ソメイヨシノの誕生です。

*1 奈良時代の『万葉集』において、梅の歌118首に対して桜の歌は3分の1の44首。
*2  10世紀初期の『古今和歌集』では、梅の歌18首に対して桜の歌は4倍の70首。

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三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]

1964年大阪生まれ、福井育ち。小1のとき読書と読みかじりを人に教える快感に目覚め、駿台予備校では教えることの技術に衝撃を受ける。東京大学 理学部物理学科卒業後19年半、BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEADでMBA修了。
2006年から教育の世界に転じ、社会人教育と同時に、子どもたち・親たち・教員向けの授業や講演に全国を飛び回る。「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマに毎年8000人以上と接している。現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授(MBAプログラム)の他に、早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院、女子栄養大学で客員教授、放課後NPO アフタースクール及びNPO法人 3keys 理事を務める。永平寺ふるさと大使。
著書多数。『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)は啓文堂書店2012ビジネス書大賞、『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位、ビジネス書大賞2014大賞、『ビジネスモデル全史』(同)はHBRベスト経営書2014第1位となった。
HPは www.mitani3.com

 

 


三谷流構造的やわらか発想法

発想法ってなんのために存在するのでしょう? ヒトと違うアイデアや答えを出すためです。統計的に有意な戦略なんて、定義により無価値ですし、統計的に正しい発想法なんてあるわけがありません。発想に「普遍性」や「高確率」を求めるなんてそもそも矛盾しているのです。発想法も、然り。これまでと違うものを生み出すには、新しい発想法がいま求められているのです。

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