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遺伝子で拓ける未来の光と影
【第5回】 2015年4月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
大西睦子

子どもの才能や体質がわかる遺伝子検査が進展
だが遺伝情報で人生の選択肢が広がるとは限らない

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米国女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが発がんリスクを抑えるために、乳房の予防切除に続いて、卵巣・卵管の予防摘出を受けたニュースが話題となりました。彼女の告白は、遺伝情報によって変わりつつある医療を前向きにとらえるものと、その勇気が称賛されています。一方で、医療領域ではない、子どもの資質を見極めるための遺伝子検査も発展しつつあります。本当にそうした検査が必要なのか? 特に子ども向けの非医療領域の遺伝子検査リスクについて考えていきます。

 2015年3月24日、ニューヨークタイムズ紙に、米国女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、卵巣と卵管の予防摘出を受けたことを告白しました。

http://www.nytimes.com/2015/03/24/opinion/angelina-jolie-pitt-diary-of-a-surgery.html?_r=2

 アンジェリーナさんは、手記で次のように述べています。

===================================

 私は、乳がんや卵巣がんのリスクを高めるBRCA1という遺伝子変異をもち、生涯で発症するリスクは、乳がんで87%、卵巣がんで50%あります。そのため、2年前に乳がん予防のための乳房切除術を受けたあと、いずれ卵巣と卵管の予防摘出を受けることを決断していました。

 卵巣と卵管の予防摘出術は、乳房切除の手術ほど複雑ではありませんが、その影響は女性にとって重いものです。なぜなら手術後に、閉経するからです。私の体と心は準備ができていましたが、主治医と議論をしたり、代替療法を調べつつ、その日がやってくるまでもっと時間があると思っていました。

 ところが2週間前に、主治医から「血液検査の結果、卵巣がんのモニタリングに使用する腫瘍マーカーは正常だが、炎症反応が上昇していて、がんの初期徴候かもしれない」という連絡がありました。私は自分自身に、落ち着いてしっかりすること、成長した子どもたちや孫に会うまで生きられない理由はないと言い聞かせました。

 その後の精密検査の結果、卵巣がんは見つからず、本当に安心しましたが、私にはまだ卵巣と卵管の予防摘出術という選択肢が残っていました。

 BRCA1遺伝子の変異があるからといって、手術を急ぐべきとは限りません。私はたくさんの医師と話し合いました。他にも代替医療などの選択肢もあります。どんな健康問題にも、多くの対処方法があるのです。一番大切なことは、選択肢を学ぶこと、そして自分自身にあう選択をすることです。私の場合、西洋医学や東洋医学の医師たちのどちらもが、手術が一番よい選択であると結論づけました。なぜなら、私自身がBRCA1遺伝子異常を有しているうえ、家族内で3人の女性ががんで亡くなった事実があったためです。母は、49歳で卵巣がんと診断されました。私は39歳です。

 私は手術を終えましたが、すべてのリスクを除くことは不可能です。事実、私はがんになりやすいのです。私は、自分の免疫力が自然に高まるよう期待しています。自分に今も女性らしさを感じますし、家族と自分のために決断したこの選択に確信があります。私の子どもが、「ママを卵巣がんで失った」ということはありません。

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大西睦子

内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科にて、造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。2008年4月より2013年12月まで、ハーバード大学にて食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)。


遺伝子で拓ける未来の光と影

ボストン在住の内科医であり、元ハーバード大学研究員である大西睦子氏が、話題の遺伝子研究の最前線をはじめ、遺伝子検査・医療のほか遺伝子食品などがもたらすメリットとデメリットについて紹介していきます。

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