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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

中国の経済回復に期待するのは危険!?
あまりにも怪しいGDP成長率データ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第29回】 2009年7月11日
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 経済活動を分析する場合の最も基本的なデータの一つは、GDP(国内総生産)である。

 中国では、経済政策の目標として「保八(実質8%成長の達成)」ということがうたわれる。農村部から都市に流入する膨大な人口に雇用機会を提供するためには、それだけの経済成長がどうしても必要だというわけだ。GDPで示された経済成長率の達成は、さまざまな国において大きな経済目標だが、中国ほど直接的な形で数値目標が設定されている国はない。

 GDP成長率という指標が重要なのは、単に中国国内だけの事情ではない。日本の輸出産業は、アメリカなど先進国の需要が減退したので、今後の市場を中国をはじめとする新興国に求めようと考えている。また、今後の投資対象として、中国をはじめとする新興国が有望ということも言われている。そうした判断の基準になっているのは、中国の経済成長率の高さだ。

 それほど重要な指標であれば、正確さはきわめて重要である。しかし、それにもかかわらず、中国のGDPデータに対しては、疑問が多い。

 前回は、IEA(国際エネルギー機関)が中国のデータに疑問を呈し、中国当局が反論していることを述べた。疑問は、それに尽きないのである。

 問題は、推計のための技術的な側面と、政治的な側面とがある。まず、推計の技術的側面を見よう。

 GDPはかなり高度に加工されたデータであり、直接に観察できるものではない。その点で、貿易量や工業生産量などとは異なる。

 日本やアメリカなどの先進国では、多数の統計を用いて、生産面(供給面)と需要面からの推計を行なう。さらに所得の推計も行なう。そしてこれらは、事後的な記録としては理論的には同一の値になるはずなので、さまざまな調整がなされる。

 しかし、中国では、きわめてプリミティブな方法で推計が行なわれている。中国のGDP統計のシステムは、社会主義経済時代のものから大きく変わっているとは言えないようなのである。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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