「俺がやらねば!」と月150時間タダ働き…その果てに見つけた「幸福に生きる」シンプルな答え写真はイメージです Photo:PIXTA

駐在先のアメリカで、やりがいと責任に追われる日々を送っていた歩兵さん(30代前半)。「何者かになれる」と信じ残業三昧の働き方を続けていたが、あることをきっかけに仕事に対する価値観が大きく変わっていく。果たして身を粉にして働く意味はあるのだろうか?※本稿は、歩兵、中尉『俺たちの転職物語』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

妻と1歳の息子を残した
不安だらけのアメリカ単身赴任

 私の駐在が決まったのはちょうどコロナが流行りはじめていたときで、「飛行機が飛ばなくなる前に入国しろ」という指示を受け、急遽予定よりも2週間前倒しで赴任をすることになりました。

 親にすら挨拶できないまま、妻子を残し、ビジネスクラスに2人しか乗っていないスカスカのアメリカ行の飛行機に乗って私の駐在生活はスタートしました。

 本来であれば妻子帯同で駐在に行けるはずでしたが、コロナの影響で当面は単身赴任になるとのことで、私は妻と1歳の息子と離れて暮らすことになりました。

 着任してから半年程は、コロナの影響で基本的にリモート業務の毎日でした。アメリカのオフィスで英語を使いながら現地スタッフと膝を突き合わせて議論をする毎日を想像していた僕は、少し拍子抜けしました。

 出社ができず、face to faceのコミュニケーションができない中での現地スタッフの管理は非常に大変でしたが、心地よい負荷と満足感で有意義な毎日を過ごしていました。

 半年ほどたつとコロナも日常になってきて、家族をアメリカに呼ぶこともできました。1歳の子供にとって、父親と離れる半年間はかなり長いもので、空港で久々の再会をはたした際、「この人がパパ?」というきょとんとした顔をしていたのは今でも忘れられません。