中国BYD、納入業者を圧迫 EV価格競争激化でPhoto:VCG/gettyimages

 中国の電気自動車(EV)メーカーの間では価格競争が激化する一方だが、部品などを納入するサプライヤーは、その影響をもろに受けているのは自分たちだと話している。

 中国最大の自動車メーカー、比亜迪(BYD)は最近、EVのエントリーモデルの価格を引き下げ、8000ドル(約118万円)を切る水準にした。これほどの低価格を実現するため、BYDなどのメーカーはサプライヤーに値下げを要求し、支払期限を先延ばしして圧迫しているという。

「Build Your Dreams(夢を築け)」を意味する社名を持つBYDは、それにちなんで「Dチェーン」と名づけた電子的な借用証書(IOU)でサプライヤーへの最初の支払いを行うことが多い。サプライヤーはこれを現金化できるまで1年近く待たされることもある。このような決済手段はキャッシュフローにとって悪夢だとサプライヤーは話している。だが受注を途絶えさせないために従わざるを得ない状況だ。

 過剰生産能力と低調な消費者需要がこの傾向を後押ししている。米国との貿易関係が引き続き緊張する中、中国経済を脅かすデフレ圧力に多くの業種が見舞われており、自動車産業もその一つだ。

 この現象は中国語で「内巻」と呼ばれるようになった。人々が懸命に働き、激しく競争しているが、誰も前進できない状況を指すこの言葉は広く使われるようになっている。

「内巻は経済が予期せぬ低迷に陥った際、特にデフレ局面で生じることが多い」。仏投資銀行ナティクシスの中国担当シニアエコノミスト、ジャンウェイ・シュー氏はこう指摘。中国EVメーカーは大規模工場を稼働させ続ける必要があり、「内巻のわなにはまっている」と述べた。