料金以外に広がるMVNOの魅力

 MVNOの最大の魅力は利用料金の安さだ。

 調査機関であるMMD研究所の調査によれば、20~50代のスマートフォンの利用料金は、平均で6514円。しかし、MVNOでは通話やデータ通信量によりさまざまだが、音声通話付きプランでは最低でも月額980円(データ通信のみなら、さらに安い)、同2000円前後のメニューが多く、「週刊ダイヤモンド」5月16日号の記事では、試算で、大手キャリアに比べ2年間で約10万円の料金差が出るケースもあったという。MVNOが“格安スマホ”と呼ばれるゆえんだ。

 安さの理由を「大手キャリアのように、全国に数百の店舗を展開していないため、運営コストを抑えられること。また回線を一括で借り上げて、安く提供することができるなどの点が挙げられる」と語るのは、「楽天モバイル」を提供するフュージョン・コミニュケーションズ販売促進グループの大西ゆかり氏だ。

 市場競争を考えた場合、MVNOはより重要なポイントを備えている。

 従来は、利用料金プランによる差別化が進められてきたが、MVNOでは通信以外の各種のサービスとの連携が進んでいることだ。

楽天モバイルのリアル店舗
東京・渋谷の楽天カフェや仙台の楽天イーグルグッズショップの中に、楽天モバイルの店舗がある。イマイチ、どのようなサービスなのかが実感できなければ、実際に見て聞いて確かめることもできる

 例えば、日本最大のECサイト・楽天市場を運営する楽天が提供している楽天モバイルの場合、NTTドコモのLTEと3G回線を利用し、通話ができて高速通信容量が3.1GBまで使えるプランを1600円(税別)で設定している。(初月は無料)。また大手キャリア同様に通信量が翌月に繰り越せるサービスや、通話料を半額にするアプリも用意。その上で、利用料金を楽天スーパーポイントと連携させ、契約期間中は、楽天市場での買い物で得られる楽天スーパーポイントが2倍になるという特典がある。幅広いジャンルの商品やサービスに利用できる楽天スーパーポイントとの連携は、強力なアピールポイントだ。

 今後、新聞の電子版とタイアップして正規料金より安く利用できたり、子ども向けの学習コンテンツを利用できるサービスなど、事業提携を通じて多様なサービスメニューを展開するMVNOが増えてきそうだ。

疑問や悩みを解決して、安心して使える環境整備を

 ただ、MVNO側にも“格安スマホ”が抱える課題を解決していく取り組みが求められる。

 例えば端末とのセット販売。

 大手キャリアと同様の販売形態で、手間はかからないのだが、端末の選択肢が少なく、MVNOやプランによってほぼ決まってしまう。その中で、楽天モバイルは、安価でハイスペックな端末から国産メーカーの端末まで8機種のスマホを揃え、機能とデザインから好みの端末を選ぶことができる。特に楽天モバイルが独占的に取り扱うダブルレンズカメラ搭載の「honor6 Plus」は、写真を撮る機会が多いユーザー向けの端末で、楽天グループのアプリがプリインストールされている。

 また、“格安スマホ”の仕組みや端末の操作方法などの疑問に答えてくれる窓口が少ないこと。

 前述のように、店舗を持たないからこそ実現できる“格安”だが、MVNOの仕組みやSIMロック解除のメリットを理解してもらい、安心して利用できるようにするためには、実店舗の増設などがMVNO間の競争を左右する。現在、他事業の店舗と提携したり、フランチャイズなど低コストで窓口を増やす動きが出てきている。

 通話が主か、メール等データが主か。
 メリットを感じられるサービスメニューがあるか。
 端末は、使い方に合った機能を持っているか。

 MVNOに、通信費の安さだけでなく、大手キャリアと競合できる多彩なサービスメニューが出揃ってきた。それはまさに30年をかけた通信自由化の恩恵である。