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真山仁の時代を読む
【第8回】 2015年7月16日
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真山仁

技術と営業を担う社長を失った町工場の未来は?
「ハゲタカ」シリーズで問う「ものづくり」再生
新刊発売記念対談【前編】 朝倉祐介さん×真山仁さん

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去る7月6日、待望の「ハゲタカ」シリーズ最新作『ハゲタカ外伝 スパイラル』を上梓した真山仁さん。新刊発売記念の対談でお迎えしたのは、真山さんと旧知の仲であり、ミクシィの社長として業績回復を果たした後、現在はアメリカを拠点にベンチャー投資やオープンイノベーションの研究を行っている朝倉祐介さんです。学生時代から「ハゲタカ」ファンだったという朝倉さんに、ビジネスを知り抜いた今シリーズを読み返して得た新鮮な驚きや、新刊のテーマでもある“ものづくり”再生のカギについて聞きました。前後編の全2回でお届けします。

“現代の歌舞伎”を目指して書いた
「ハゲタカ」シリーズの第1作

朝倉 今日の対談のために、新刊の『ハゲタカ外伝 スパイラル』はもちろん、改めて『ハゲタカ』シリーズを第2作『バイアウト(文庫版で『ハゲタカ2』に改題)』、第3作『レッドゾーン』、第4作『グリード』まで最初から読み返してきました!

真山 ありがとうございます。朝倉さんとは、共通の知人を通じて知り合ってから、もう5年ぐらいになるのかな。

朝倉祐介さんプロフィル/1982年兵庫県西宮市生まれ。中学卒業後、オーストラリアの競馬騎手養成学校に入学。帰国後、北海道で競走馬の調教助手を務めた後、東京大学法学部に入学。2007年にマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。国内外の大手企業、公的機関の戦略立案、オペレーション改善プロジェクトなどに従事。その後、自身が学生時代に立ち上げたネイキッドテクノロジーの代表取締役社長兼CEOに就任。11年、同社をミクシィに売却したことを機にミクシィ入社。事業開発などを担当し、13年より代表取締役社長、同社の業績回復を機に退任。現在、米スタンフォード大学客員研究員。

朝倉 そうですね。(自身も創業メンバーで後に社長を務めた)ネイキッドテクノロジー在籍時でしたから2010年だと思います。初めて真山さんにお会いしたときは、ちょっと緊張しました。作家の方に会うこと自体初めてだったし、第1作の『ハゲタカ』は学生時代に読んでいましたけど当時の真山さんのプロフィル写真は暗い背景のせいか怖そうな人に見えたから(笑)。でも話してみたらすごく気さくで、『ハゲタカ』の登場人物のキャラクター設定など裏話も含め、いろいろ聞かせていただきましたよね。

真山 私としても、若手ファンの生の声を聞ける貴重な機会でした。読者の中には「ハゲタカ」シリーズ以外の真山作品は読まないという方も多いのですが、朝倉さんは他の作品も読んでくれて、母校である東京大学の学生やOBと私の小説について意見を交換する機会を何度かつくってくれたり。当時、若い読者とどう接点を持つべきか悩んでもいたので、本当に有難かったです。今も開催している“真山ゼミ(私的な勉強会)”など若い人たちとのつながりの基礎は朝倉さんのお陰で築くことができました。

朝倉 いえ、少しでもお役に立てたのであれば嬉しいです。初めて『ハゲタカ』を読んだときは、金融のスキームなど専門的な話が次々と出てきて読み進めつつも理解しきれていなかったのですが、今回読み直してみると、すごくすんなり入ってきて早く読めました(笑)。

真山 今では現場のプロですからね。

朝倉 いえいえ…でも、たとえば鷲津政彦(主人公の外資系投資ファンド社長)が不良債権をまとめ売りするバルクセールから企業再生へと、実は全然違うビジネスに移っていったんだな、とあらためて分かったりして、別の面白みがありました。あとドラマで演じていた中尾彬さんの印象が強く残っている飯島亮介(鷲津のライバルで事業再生家の芝野健夫が銀行員だったころの上司)は小説中だと実は細身に描かれていたんだ…なんて気づきもあって(笑)、楽しかったです。

真山 おっしゃる通りで、私も自分の作品なのにドラマのインパクトからいつの間にか飯島を恰幅よく描いてしまい、校正さんに指摘されたことがありました。もともと恰幅のいい悪人だとアクが強すぎるから細身という設定にしていたのですが(笑)、文庫の新装版が出たときに恰幅よく統一しました。鷲津も小説中では眼鏡をかけていないけど、ドラマで眼鏡をかけて演じた大森南朋さんの印象が強いですよね。あのイメージを抱いた読者が後から小説を読んだら混乱しないかなと少し心配しましたが、意外と大丈夫だったみたいです。

朝倉 映像のインパクトは大きいですけど、両方みると面白いですよね。あ!あと、「ハゲタカ」シリーズ第2作『バイアウト』に、シリーズ以外の作品『マグマ』で投資ファンドから地熱発電会社に出向する主人公が出てきたり。昔、『バイアウト』を読んだときは『マグマ』を読む前だったから気づかず、今回の発見でした。

真山 私が好んで読む英米のミステリ小説ではよくあるのですが、「ハゲタカ」シリーズでは別作品の登場人物を時々チラリと出しています。愛読者にだけわかるサービスのようなもので。

 たとえば、『ハゲタカ2』で鷲津にインタビューする女性キャスターは、『虚像(メディア)の砦』に出ていました。最新作『ハゲタカ外伝 スパイラル』にも、『ハゲタカ2』で登場した軍事産業や、単行本化されていないスピンアウト連載『ハーディ』に登場した日系アメリカ人女性社長が出てきますよ。池波正太郎さんが『仕掛け人 梅安』シリーズに『鬼平犯科帳』シリーズの登場人物を登場させるなどは有名ですが、日本の小説ではあまり見られない遊びかもしれません。

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真山仁 

まやま・じん。小説家。1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年、企業買収をめぐる熱き人間ドラマ『ハゲタカ』でデビュー。2007年に『ハゲタカ』『ハゲタカ2(『バイアウト』改題)』を原作とするNHK土曜ドラマ『ハゲタカ』が放映され、大きな反響を呼ぶ。同ドラマは国内外で多数の賞を受賞した。また、地熱発電をテーマにした『マグマ』も、2012年にWOWOWでドラマ化された。その他の著書に、日本の食と農業に斬り込んだ『黙示』、中国での原発建設を描いた『ベイジン』、短篇集『プライド』、3.11後の政治を舞台にした『コラプティオ』、「ハゲタカ」シリーズ第4弾となる『グリード』、『そして、星の輝く夜がくる』などがある。10/30に最新刊『売国』(文藝春秋)を刊行予定。2014年でデビュー10周年を迎えた。

 


真山仁の時代を読む

2004年に外資系バイアウト・ファンドの内実を描く『ハゲタカ』で鮮烈なデビューを飾って以来、日本の「今」を見つめながら数々の問題作を世に送り出してきた作家の真山仁さん。2014〜2015年は新刊作品や新連載も目白押しであり、本連載ではデビュー10周年を記念して、様々なインタビューや講演録など、真山さんの作品に込めた思いや作品作りの裏側をご紹介していきます。

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