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格差社会の中心で友愛を叫ぶ

「謎の手形」に「赤字伝票」!
非情な町工場“いじめの構図”

――「モラトリアム法案」可決でも救われない

西川敦子 [フリーライター]
【第2回】 2009年11月20日
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 いまだリーマンショックの影を引きずる製造業界。中でも中小製造業の町工場が集まる大田区は青息吐息だ。しかも、ここ大田区では、公正取引委員会にも“ご注進”できないある違法行為が横行しているという。下請け町工場が抱える製造業界の闇とは――

 現場に聞いてみた。

「買うのは現金、売るのは手形」

 支払いサイトが5カ月、6カ月はザラ。振出日は空欄のまま――。

 取引先から振り出されるこんな手形に、大田区の町工場が悲鳴を上げている。

 資金回収に時間のかかる製造業では、とくに一般的に利用されている約束手形。ちなみに約束手形とは、発注側である手形の振出人が、下請け会社、つまり手形の受取人に対し、指定した期日に代金を支払う約束をする有価証券のことだ。

 下請け会社の方も原材料費や外注費を支払わなければならないため、多くの場合は、期日前に銀行から手形を担保に借金をすることになる。

 ただしこの際、あらかじめ利息分が割り引かれた金額しか入ってこない。資金繰りに苦労している中小・零細企業にとって、期日を待てば金が足りず、割引すれば損をする。どっちにしても火の車というわけだ。

 電子部品設計・製造会社を経営するAさんはこう明かす。

 「大きな仕事が入ってくるとありがたい半面、頭を抱えちゃうんですよ。なにしろ、動くお金が大きいでしょ。おまけに製品を全部納めないうちは、代金は払ってもらえない。その間、あたしの方は外注費を払わなくちゃいけないわけですよ」

 しかし、ようやく納品したと思ったら発注会社は“手形払い”である。

 「買うのは現金、売るのは手形。いや正直、本当に苦しいですよ」

「当局にご注進」できないワケ

 公正取引委員会では、下請け代金の手形サイトを「原則120日以内」と指導しており、それ以上の手形は「割引困難」な手形としている。しかし、ここ大田区では、そうした指導などまるで無視した商慣習がまかり通っているのだ。

 そればかりか、手形の振出日が空欄になっている「白地手形」を振り出す企業もある。振出日を記載していなければ、第三者にはサイトの期間がわからない。後々の面倒を恐れての策なのだろうか――。

 「手形は勘弁してください、って親会社(発注会社)に言うとさ、『じゃあ、もっと値下げしてよ』と、こうだもん」とバルブ製造業のBさん。

 問題はそればかりではない。

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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