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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

無用な“狭さ規制”で生活保護者が家を奪われる!?

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第17回】 2015年7月24日
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2015年7月1日から、生活保護の家賃補助(住宅扶助)が引き下げられている。

この「低所得層の住」の根本にかかわる問題は、今、どのように「生活保護の住」に影響を与えているのだろうか?

今回は、生活保護の家賃補助減額に伴う影響について、賃貸住宅仲介に関わる不動産業者の経験と意見を紹介する。

低家賃でも“狭い物件”はダメ?
生活保護の住に新たなハードルが

 「福祉のお客さん、生活保護のお客さんに賃貸のお部屋を紹介する仕事は、今までもやりづらかったです。7月からの住宅扶助引き下げで、さらに、やりづらくなりそうです」

台東区内のオフィス近くにたたずむTさん。爽やかなスポーツマンというイメージは、従来の不動産業のイメージも変えて行きそうだ

 東京都台東区内の不動産業者・Tさんは、淡々とした口調で、しかし、やりきれない表情を浮かべながら語る。一見「若々しく爽やかなサーファー」という印象のTさんは、3年前から、生活保護利用者への賃貸物件紹介にも取り組んでいる。主に対象としている地域は東京都と埼玉県。オフィスの立地から、山谷地域を含む台東区・荒川区での物件紹介も多い。路上生活からのアパート入居に関わることもある。

 「一番気の毒なのは、お客さんです。以前から生活保護を受けている方の中にも、最悪の場合、住むところがなくなる方も出てくるかもしれません」(Tさん)

 しばしば「DV被害から逃げてきた」「単身で、小さな子どもを抱えている」「高齢である」……といった問題を抱えている生活保護利用者たちは、物件探しで最初から不利な状況にある。

 「アパートの契約には、身分証・携帯・緊急連絡先が必要です。一つでも欠けると、物件の半分はダメです。でも福祉の方は、身分証がなく、家族とも疎遠なことが多いんです」(Tさん)

 生活保護を利用し始めてからの物件探しの場合、家賃として認められる上限額は住宅扶助で定められた金額(東京都の単身者で5万3700円)である。もちろん、生活保護を理由として入居を断られることもある。金額から、さらに「生活保護」という面から、選択肢が狭められる。

 「どこの地域も、物件の7割以上は無理ですね。入居するには、管理会社・保証会社の審査を通し、さらに大家さんがOKする必要があります。大家さんが『福祉の方、お断り』だと、最初から無理なんです。台東区の場合、物件の9割は無理です」(Tさん)

 なんとか見つかった住まいだが、狭く、家賃は安い。福祉事務所としては拒む理由はなさそうだ。

 「でも実際には、管理会社・保証会社・大家さんともOK、もちろんご本人も希望というケースでも、ケースワーカーが許可しないので入居できない場合があります。『少しでも安い物件に誘導したいのかな?』という意図なのかと考えていましたが」(Tさん)

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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