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やりなおす戦後史
【第3回】 2015年8月6日
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蔭山克秀

戦後の政治もまた、
改憲をめぐる攻防から始まった
自民党の誕生と55年体制

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戦後70年の今年、安保法案をはじめとする憲法改正論争が盛んになっている。日本の安全保障は戦後から今日まで一貫して日米関係が軸だが、その是非をめぐる政治ドラマも戦後史の大きなポイントだ。第3回は、吉田茂の対米追従vs鳩山一郎の対米自主路線の対立と、戦後の日本を形づくる自民党政治の誕生について。

バカヤロー解散と鳩山一郎の復活

第1回第2回で見たように、吉田茂首相のもとで「対米協調」路線の通商国家づくりを目指した日本は、その後、順調に高度経済成長期を迎える。しかし、徐々に政界では風向きが変わり、一つの時代が終わろうとしていた。吉田茂の「バカヤロー解散」である。

吉田茂

 1953年に開かれていた衆議院予算委員会の席上で、自由党の吉田首相は社会党右派の西村栄一議員との質疑応答に興奮し、小声で「馬鹿やろう……」と呟いたのがマイクに拾われて大騒ぎになったという事件だ。

 この後、野党から内閣不信任決議案が出され、その不信任案にふだんから吉田と反目しあっていた鳩山派(「自由党民主化同盟(民同派)」の鳩山一郎・岸信介・河野一郎・三木武吉・石橋湛山ら22名)は、何と賛成票を投じたのだ。彼らはこの賛成票に合わせて自由党を脱党し、衆議院内で「院内会派・自由党」(“我こそは真の自由党なり”という意識を持った集まり)を結成したのだ。

 ちなみに、「吉田vs鳩山」という対立は、戦後政治のわかりやすい構図だが、その火種の一つにこういう出来事があった。

 1946年、戦後初の総選挙を経て最初の首相になる予定だった日本自由党総裁・鳩山一郎は、首相になる寸前にGHQから公職追放された後、1951年のサンフランシスコ講和条約直前に追放が解除されたのを受け、1952年の総選挙で、念願の政界復帰を果たしていた。

 その後、鳩山、河野、三木、石橋ら日本自由党の創成メンバーに加え、元A級戦犯容疑から不起訴・無罪になった岸信介も含めた「公職追放組」は、気持ちも新たに吉田茂の自由党に合流するが、ここで吉田に裏切られる。

 前に吉田は「鳩山さん、この席は本来あなたが座るべき椅子だ。公職追放が明けたらすぐに総裁を交代しますよ」と約束して、総理総裁の座に就いた。ところが、実際に鳩山の公職追放が明けて復帰してみると、「お帰りなさい。あなたの席は温めておきましたよ」どころか、「は? 何を今さら古い証文持ち出してんの? ムリムリムリ」と、頑として総理総裁の座を譲らなかった。

鳩山一郎

 それどころか吉田は、反吉田を全面に押し出す河野一郎と石橋湛山を、自由党から除名した。鳩山派は激怒し、吉田との対立は深まった。鳩山・岸ら「反吉田派」は公然と“党内野党”として振る舞い、せっかく自由党は1952年の総選挙で念願の単独過半数を獲ったにもかかわらず、全然安定しなかった。その後、自由党内で鳩山派は「自由党民主化同盟(民同派)」を結成し、党内でますます対立を深めていたのだ。

 こうして不信任を食らった吉田内閣は、衆議院を解散するか辞めるかしかない。でも政治家には「不信任を食らって辞めるのは恥」という意識があるから、こういう場合は解散総選挙に打って出て、国民の審判に委ねるのが筋だ。

 しかしその総選挙で、吉田の自由党は過半数割れの一九九議席しか取れなかった。結局吉田は、屈辱的だが鳩山らに復党を促して政権の座を守った。吉田の求心力は明らかに低下していた。その後、勢いづいた反吉田派は、再び鳩山・岸らが自由党を脱党して重光葵の改進党と手を組み、「日本民主党」を結成した。

 日本がアメリカから独立したことで力を失った吉田と、逆に力を得た鳩山。時代は確実に動き始めた。そしてついに、翌1954年12月、自由党の吉田首相は辞任し、日本民主党の鳩山一郎首相が誕生する。

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 代々木ゼミナールで圧倒的な人気を誇る公民科No.1講師。政経だけでなく倫理、現代社会もこなし、3科目すべての講義がサテライン衛星授業として、全国の各代ゼミ校舎に映像配信されている。語り口の軽妙さ、板書の確かさ、内容の面白さとわかりやすさで他の追随を許さず、生徒たちからも「先生の授業だけ別次元」と高い評価を受ける。参考書や問題集の執筆も非常に多く、合計20冊近く刊行されている。代表作は『人物で読み解くセンター倫理』『蔭山のセンター現代社会』(以上、学研教育出版)、『蔭山克秀の政治経済が面白いほどわかる本』(KADOKAWA)など。

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