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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

近頃なにかと影が薄い「左派」。
元気な保守に対抗するためには、こんな大胆な戦略を!

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第95回】 2014年12月4日
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 「保守」の論客の元気がいい。「国家観」や「歴史観」、「伝統」といった言葉を好んで使ったり、「南京虐殺はなかった」とか「従軍慰安婦は存在しなかった」と主張したり、中国、韓国を嫌ったり、靖国神社に参拝し、愛国心を訴えたりする保守論客の大きな声が、テレビや書籍、雑誌、インターネットに氾濫している。

 保守の議論は、単純明快でわかりやすい。だが、いささか幼稚で品位に欠ける部分がある。「ヘイトスピーチ」という形で、考えの違う者を攻撃するところまでエスカレートしてしまうこともある。そういう意味で、保守に対抗する存在であるはずの左派陣営には、もう少しがんばってもらいたいものである。

 だが、左派の影は薄い。東西冷戦の敗北によって、共産主義国家の解体という現実を見せられて、マルクス主義が説得力を失ってしまった。しかし、左派は冷戦期を超える思想を打ち出すことができなかった。

 東西冷戦期、日本が西側陣営に属することを前提にして、左派は「万年野党」側に立って、保守の「現実」に対して「理想」を話していればよかった。だが、東西冷戦が終わり、グローバリゼーションによる大競争や、テロなど新しい形態の紛争、そして中国の台頭という国際情勢の変化や、少子高齢化による社会保障費の増大、財政赤字の深刻化、格差拡大などのさまざまな国内問題に対して、左派は相変わらず「理想」を語るだけである。保守は、国内外の厳しさに対して「感情論」で訴えるだけだが、それに対抗するリアリティのある議論を左派は構築できていない。もはや、「理想」だけでは、国民の心に訴えることはできないのだ。

左派の戦略的思考(1)
北朝鮮拉致問題

 左派が今、やるべきことは、「理想」に行きつくための、具体的な「戦略」を提示することで、議論にリアリティを持たせることではないだろうか。例えば、北朝鮮拉致問題を考えてみる。保守は「拉致問題の解決なくして、国交正常化はない」と主張している。これに対して、左派は「国交正常化なくして、拉致問題の解決はない」と考えてみてはどうだろう。

 国交正常化すれば、平壌に日本大使館が建つことになる。大使館が建てば、それは拉致被害者等、在留日本人の「駆け込み寺」になる。そして、日本人のみならず、韓国などさまざまな国から拉致された被害者の駆け込み寺にもなっていく。彼らからもたらされる情報によって、北朝鮮はなにも隠ぺいできなくなる。日本など諸外国の、北朝鮮に対するネゴシエーションパワーが強まる。金王朝は崩壊に向かわざるを得なくなる。これが、保守に対抗する、左派の戦略的思考である。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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