先日、2型糖尿病治療薬の抗肥満効果を検討した試験結果が報告された。ただし抗肥満薬として適応は、国内では未承認であることを明記しておく。

 糖尿病治療薬の進歩は目覚ましい。旧世代の主要な糖尿病治療薬が血糖を下げる代償に肥満を引き起こす自己矛盾を抱えていたのに対し、新世代の血糖降下薬は、糖代謝を制御すると同時に抗肥満作用を発揮する薬剤が少なくない。

 米コロンビア大学の研究グループは、このうちGLP‐1受容体作動薬の抗肥満効果を検討した。対象は2型糖尿病ではないが、体格指数(BMI)30以上の肥満か、もしくは高血圧あるいは脂質異常症があり、BMI27以上の過体重の成人男女3731人。無作為にGLP‐1受容体作動薬群とプラセボ(偽薬)群に割り振り、56週間後の体重の変化を比較した。

 被験者の平均年齢は45.1歳、平均体重106.2キログラム、平均BMIは38.3だった。6割が糖尿病予備群と診断されている。

 GLP‐1受容体作動薬は自己注射薬だ。試験期間中、被験者は1日1回、太もも、腹などに自分で皮下注射を打っている。また、全ての被験者が生活習慣改善のカウンセリングを受けた。

 治療を完遂した被験者の56週間後の体重を比較した結果、実薬群では平均8.4キログラム体重が減った一方、偽薬群は平均2.8キログラムの減少にとどまった。糖尿病への進展を抑えるのに必要な体重の5%以上の減量を成功させた人の割合は、実薬群が63.2%と6割を超えたのに対し、偽薬群は27.1%、1割減量達成は実薬群が3割、偽薬群は1割だった。

 実薬群の主な副作用は軽度~中等度の下痢や吐き気など。副作用を理由に試験から下りた被験者は約1割だった。

 GLP‐1受容体作動薬は昨年末、米食品医薬品局によってBMI30以上、肥満関連疾患を持つBMI27以上の患者を対象に抗肥満薬として承認されている。一方、BMI25以上で肥満とされる日本では、自己注射と副作用(と費用)のリスクを超えるベネフィットがあるかは疑問符が付く。今のところ日本で承認の動きはない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)