コレステロール含有食品の筆頭として制限されていた卵。ところが近年は、卵復権の報告がいくつも出されている。

 象徴的なのは、今年2月に発表された米国の栄養摂取ガイドラインの政府試案から、卵を含むコレステロール含有食品の制限に関する記載が削除されたこと。コレステロール含有量が高い食品を制限しても、血中コレステロール値には影響しないとの裏付けもあり、今秋発表予定の米栄養摂取基準ではコレステロール含有食品の摂取制限が撤廃される見込みだ。代わって、飽和脂肪酸や糖質が新たな「悪役」を担うらしい。

 日本人の「食事摂取基準(2015年版)」でも、卵の摂取量と心疾患、脳血管疾患および死亡率との関連が疑問視され、特に制限は設定されなかった。

 さらに卵の有用性を積極的に評価する動きもでてきた。先日、東部フィンランド大学のグループから「卵と2型糖尿病の発症」に関する調査結果が報告された。

 同調査では42~60歳の男性、2332人に対し食事調査を行ったうえで、平均19.3年を追跡。追跡期間中、432人が2型糖尿病と診断されている。

 また、卵との関係を調べると、卵の摂取量が増えると、2型糖尿病のリスクが低下することが示されたのだ。週に約4個の卵を食べていた男性は、週に1個程度の男性に比べ、2型糖尿病の発症リスクが37%低下した。

 この効果は、運動量や肥満度、野菜や果物の摂取量など他のリスク因子を調整した後も、一貫した傾向を示している。ただし、週に4個以上では、さらなる効果は認められなかった。

 卵一つで健康が左右されるとは考えにくいが、元来、卵には必須アミノ酸(タンパク質)をはじめ、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれている。研究者は「これらの栄養素が血中のブドウ糖の代謝を促進し、炎症反応を抑えているのかもしれない」としている。

 ともあれ、和洋中華に欠かせない卵の制限撤廃は朗報。もちろん食べ過ぎはダメだが、今日の昼食は久々に「オムライス」なんてどうでしょうか。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)