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東京が壊滅する日 ― フクシマと日本の運命
【第16回】 2015年9月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
広瀬 隆 [ノンフィクション作家]

あまりにも無責任すぎる!
原子力規制委員会の正体
――広瀬隆×田中三彦対談<中篇>

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『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。
壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が第5刷となった。
本連載シリーズ記事も、累計171万ページビューを突破し、大きな話題となっている。
このたび、新著で「タイムリミットはあと1年しかない」とおそるべき予言をした著者が、元福島第一原発の原子炉設計者で、現在、翻訳家・サイエンスライターの田中三彦氏と対談。
田中氏は福島原子力発電所国会事故調査委員会の委員をつとめた。
避難にまったく責任を持たない原子力規制委員会の闇を追及する。
(構成:橋本淳司)

「新規制基準」の
おおいなる誤解とは?

広瀬 隆
(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。

田中 8月11日に川内原発が再稼働しました。原発周辺の人は、「新規制基準に適合し、安全な原発になったから再稼働した」と思いたいのかもしれません。しかしながら、それは大きな誤解です。

 「新規制基準」とは、安全かどうかを見定めるものではないのです! 実際、この基準を策定しはじめたころ、規制委員会はそれを「新安全基準」と呼んでいた。しかし、やがて自分たちがつくろうとしているものが「安全基準」でないことに気づき、慌てて名称を「新規制基準」に変えている。

新規制基準とは、あくまで、重大な原発事故が起きうることを認めたうえで、その対応ができているかどうかを見定めるものです。

広瀬 再稼働直前の検査段階で、九州電力が何をやりましたか? 大事故を想定した訓練をやったのですよ。要するに事故は起こると思いながら再稼働させているわけです。それをみんなが認識していないということですよね。

田中 おっしゃるとおりです。原子力規制委員会のホームページに、「新規制基準」とは何かということを説明する文書が掲載されていて、IAEAモデルの1~3層に当たる部分が強化されています。 しかし本来は、以前からやっておくべきことばかりです。やらなかったから津波にやすやすと突破された。基本中の基本の第一層があまりにも脆弱だったということです。

田中 三彦
(Mitsuhiko Tanaka)
1943年、栃木県生まれ。1968年、東京工業大学工学部生産機械工学科卒。同年バブコック日立入社。福島第一原子力発電所4号機などの原子炉圧力容器の設計に関わる。1977年退社。2012年、東京電力福島原子力発電所国会事故調査委員会委員。翻訳家であり、科学評論家、サイエンスライターでもある。
『科学という考え方』(晶文社)、『原発はなぜ危険か』(岩波新書)、『空中鬼を討て』『複雑系の選択』(以上、ダイヤモンド社刊)などの著書がある。
おもな訳書には、『複雑系』(M・M・ワールドロップ、共訳・新潮社)、『スピリチュアル・マシーン』(R・カーツワイル、翔泳社)、『デカルトの誤り』(A・R・ダマシオ、ちくま学芸文庫)、『無意識の脳 自己意識の脳』(同、講談社)、『感じる脳』(同、ダイヤモンド社)、『たまたま』(L・ムロディナウ、ダイヤモンド社)などがある。

広瀬 つまり、いままで日本の原発は事故対策が穴だらけだったので、今回どさくさに紛れて、当然やるべきことの、ほんのいくつかに手をつけただけですよね。

田中 そしてその1~3層の上に、前回連載で触れた「シビアアクシデント」対策が記載されています。4層にあたる部分、格納容器の破損とか水素爆発の防止策などです。

おそるべき九電の正体!
約22分で原子炉炉心が溶融する!

広瀬 この新規制基準の審査はどのように行われてきましたか。

田中 2014年3月号の雑誌『科学』(岩波書店)に、「不確実さに満ちた過酷事故対策――新規制基準適合性審査はこれでよいのか」(井野博満、滝谷紘一)に、川内原発・伊方原発・高浜原発・玄海原発など、再稼働の対象になっている加圧水型原発(PWR)の審査のやりとりが書かれているのですが、この内容はかなり衝撃的です。

 原子炉に直結している大口径配管(一次冷却水配管など)が破断し、何らかの原因で交流電源(外部電源と非常用交流電源)が失われた場合、配管の破断で冷却水が失われてゆき、しかも電気がこないために緊急炉心冷却装置のポンプが動かず、格納容器スプレイ装置も動かないという最悪の事態になります。
 九州電力によると、佐賀県にある玄海3・4号機の場合、わずか約22分で原子炉の炉心が溶融するという事態に突入します。たった22分ですよ。

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広瀬 隆 [ノンフィクション作家]

1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図で衝撃的な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯―ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『二酸化炭素温暖化説の崩壊』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』『原発ゼロ社会へ! 新エネルギー論』など著書多数。


東京が壊滅する日 ― フクシマと日本の運命

公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図で衝撃的な事実を提供し続けるノンフィクション作家の広瀬隆。『東京が壊滅する日 ― フクシマと日本の運命』は壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた大作。51の【系図・図表と写真のリスト】と公刊された科学的データで誰も知らなかった真実を掲載。本連載では、本書周辺の原発再稼働をめぐる問題や、今そこにある危機を紹介する。

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