ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
社長! 御社は銀行からまだまだおカネを借りられますよ!
【第2回】 2015年9月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
村上浩

「社債」は百害あって一利なし
中小企業のための銀行対策(2)

9月、それも末日に近づくにつれ、銀行から案内されることが多くなる金融サービスがあります。それは「社債」。銀行出身で、これまで財務が傷んだ中小企業を数多く再生に導いた村上浩氏によると、社債は「百害あって一利なし」。その理由を聞きました。

3月9月の決算期末は
銀行の営業が熾烈になる

私募債を発行することになると、銀行は記念盾などを贈り、社長さんのプライドをくすぐりにかかってきます。

 たいていの金融機関は、3月と9月に決算期末を迎えます。本店から各支店に割り当てられた目標数値の締め切りでもある、最も多忙な時期です。人事考課に大きな影響を及ぼしますので、支店幹部は目標を達成するために最大限の努力をいといません。場合によっては支店長自ら無理強いに近い営業に乗り出すこともあります。

 筆者が籍を置いていた銀行では、2期続けて支店目標を達成できないと、支店長は左遷させられるとの噂がありました。本当のところは平社員の知るところではありませんが、おおよそ業績動向と支店長人事は連動していたようなので、「当たらずとも遠からず」なのだと思います。

 目標数値は、預金残高や貸出金残高など、複数設定されています。なかでもいちばん重きを置かれるのが「業務純益」。一般事業法人では営業利益に相当するものです。

 この数値を増やすには、伝統的な銀行業務である融資を伸ばそうと考えるのがかつての王道でした。しかしバブルが崩壊してからというもの、ごくごく最近まで中小企業向け貸出は減少トレンドが続き、思うように融資が伸びません。今でも、資金を調達して前向きな設備投資に乗り出すことに慎重な企業は多いです。

 金融機関が貸しても大丈夫だと思う優良企業にはそもそも資金需要がなく、あっても自己資金でまかなってしまう。一方、資金を調達しないと生きていけない(危ない)企業に対しては「傘を貸さない(貸せない)」。本店の企画担当者が考えるほど、現実は甘くないようです。

 そんななか、一気に業務純益を上げる手があります。社債です。決算期を前に社債引き受けが決まれば、多額の手数料が一気に手に入ります。発行額が5億円、表面金利が1.00%、引受手数料0.80%の私募債を引き受けると、当期中に400万円もの手数料を手にできます。

 一般融資5億円ではこうはいきません。仮に決算月の月初日に融資を実行しても、1.80%の金利収入では当期中の貢献額は75万円余にしかなりません。業務純益の積み重ねにあらん限りの力を出しているなかで、この差は非常に大きいのです。

社債を勧めるのは銀行の都合!
後日のリスクに付き合うな

 しかし、この社債は、中小企業にとってはただのクセモノでしかありません。決算期末が近づくと大手金融機関が営業をかけてくる私募債発行にはぜひ気をつけてください。

 一般貸出と違って償還を待ってくれないので、リスケができません。もし償還ができない場合、格付けは確実に下がります。暫定措置として短期貸出扱いで償還金の相当額を融資してはくれるものの、驚くほど高い金利が設定されます。

リスケした借入金の金利は平均2.00%程度なのに、社債償還金の融資には6.00%近い金利を取られてしまうケースもあります。何度も利下げ交渉をしても「こればかりはデフォルト(債務不履行)扱いなので……」と思うようにいきません。

私募債発行を中小企業に勧めるのは金融機関の都合です。「第1回無担保社債発行記念」なんて記念盾を贈られ、社長さんのプライドをくすぐりにかかってきますが、経済効果は一般融資と一緒。わざわざ金融機関に付き合って後日のリスクを背負うことはありません。決算期末月は特に要注意、油断しないでください。
『社長! 御社は銀行からまだまだおカネを借りられますよ!』より)

スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
キーワード  融資 , 社債
自分の時間を取り戻そう

自分の時間を取り戻そう

ちきりん 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
生産性は、論理的思考と同じように、単なるスキルに止まらず価値観や判断軸ともなる重要なもの。しかし日本のホワイトカラー業務では無視され続け、それが意味のない長時間労働と日本経済低迷の一因となっています。そうした状況を打開するため、超人気ブロガーが生産性の重要性と上げ方を多数の事例とともに解説します。

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


村上浩(むらかみ・ひろし)

株式会社リンクス代表取締役。
1985年大学卒業後、足利銀行に20年間勤務。17年間、複数の本支店で融資、債権回収業務に携わる。回収業務では、ゼネコンを中心にバブル期に大量に貸し付けた資金を回収した。
2002年、足利銀行がデフォルトを起こす直前、取引先の再生支援を目的に新設された「企業支援部」に配属、様々な再生手法を学ぶ。当時の栃木県は、企業再生件数が東京都に次ぐ(日本)国内2位であり、県内の地方銀行2行のうち1行、信用金庫10行のうち5行が国有化・統合された。そのような特殊な環境下で、中小企業の再生業務の経験を積む。
足利銀行デフォルト後も融資実務に携わるが、取引先再生支援の判断を機械的なスコアで決めることに違和感を覚える。貸出額10億円未満の中小・零細企業も事業再生の機会を与えられるべきだとし、企業支援部時代の同僚と、再生コンサルタント集団「リンクス」を2006年に創業。クライアントの半分が「破たん懸念先」か「実質破たん先」のどちらかという過酷な環境の中、200社以上のうち150社の再生に成功。産経新聞、日本経済新聞(栃木版)などメディア掲載多数。


社長! 御社は銀行からまだまだおカネを借りられますよ!

本連載では、中小企業経営者の方ならぜひとも知っておきたい銀行対策のコツをご紹介します。「9月と3月に営業を受けることが多い社債には気をつけろ!」「信用保証協会付き融資を受けやすくコツとは?」など、すぐに役立つ便利な知識が盛りだくさん。地方銀行で20年間融資業務に携わってきた著者だからこそわかる、銀行員のホンネとは?

「社長! 御社は銀行からまだまだおカネを借りられますよ!」

⇒バックナンバー一覧