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社長! 御社は銀行からまだまだおカネを借りられますよ!
【第3回】 2015年9月16日
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村上浩

メガバンクには気をつけろ!
中小企業のための銀行対策(3)

突然メガバンクから「御社の銀行借入を全額肩代わりさせてください」と営業されたら、どうしますか? これまで数多くの中小企業を再生に導いてきた村上浩氏は、「安易にメガバンクを取引金融団に加えるのはおすすめしない」と言います。それはなぜか聞いてみました。

突然中小企業に営業をかける
メガバンク

 どの金融機関と付き合うかは、一国一城の主たる社長が決めればいいことです。しかし、企業の売上規模によって、どのレベルの金融機関が妥当なのか、たいていの見当はつきます。規模と営業エリアの小さい順から「信用組合・信用金庫」クラス→「第二地方銀行」クラス→「地方銀行」クラス→「都市銀行」クラス(信託含む)のように色分けされます。

 起業したての中小企業が都市銀行クラスと取引できるのはまれで、たいていは、日本政策金融公庫などの政府系金融機関か、信組・信金などの地域密着型・中小企業特化の金融機関にお世話になるのが普通でしょう。やがて企業が成長を続け、売上高が増え、必要とする資金量が増えるに従い、別の金融窓口が必要になります。

 このタイミングで、1つ上のクラスとの付き合いが始まります。金融機関側にとって新たな優良運用先を開拓し、収益源を確保する絶好の機会。中小企業にとっても大きな資金需要に応じてくれる資金調達窓口が増えることはありがたいでしょう。まさにウィン・ウィンです。

 ところで、メガバンクはこの順番にこだわらずに突然営業をかけてきます。順調に売上高・利益を伸ばし、経営に自信を深めつつある頃に「ぜひうちと取引してください」とやってきます。有名大学出身のメガバンク行員にアプローチされ、業績と経営手腕をほめ称えられたら、気分が悪くなる人がいるでしょうか。

 「うちもとうとうメガバンクから取引を頼まれる企業になったか」と感慨もひとしお、担当者から提供される情報や提案の目新しさに心を奪われ、いつの間にかメガバンクが取引金融機関の上位に加わっていた。こんな経験をした社長は割と多いのではないでしょうか。

メガバンクは
資金の逃げ足が速い!

 メガバンクが取引金融団に加わったことで全体の調和が取れるのなら問題ありませんが、もし社長の自尊心を満たすためにメガバンクをメイン行としている場合は注意が必要です。

 彼らは世界規模で営業しているので、事業基盤は強大です。預金以外に資金を調達する方法はたくさんあるので、貸出金利が他の金融機関より低いことが多いです。

 しかし、外部環境の変化に非常に敏感であり、金融環境や政策の変化にすぐさま対応する傾向が強く、資金の逃げ足も速いのです。世界的な金融引き締めが行われた時や融資先の業績が悪化した時には、相手が中小企業であっても迷うことなく資金を引き上げます。

 過去にそのような仕打ちを受けたことがある社長さんも多いのではないでしょうか。営業エリアが一定地域に限られているために逃げられない地銀以下の金融機関とは、実に対照的です。

デリバティブで損したら
一度銀行へ相談を

 メガバンク関連の取引で特に今問題になっているのは、金融派生商品(デリバティブ)と呼ばれるリスク商品の販売です。リスク商品というのは、商品を買った顧客に元本割れリスクがあるという意味で、販売する銀行側にはありません。このリスク商品を銀行に薦められるまま買ってしまい、相場が下落して損失を抱えた顧客が、「金融ADR制度」を使って銀行と争うケースが一時増加しました。

 「金融ADR制度」とは、裁判外で金融機関と和解するよう調整する制度で、業界団体などが仲介します。株式相場が上昇トレンド入りしたのでいくらか落ち着きを見せていますが、相変わらず紛争事例は多いです。この制度で和解が成立せず、裁判に移行する例もあります。地銀上位行でも同様のトラブル話は聞きますが、損失額の多いデリバティブ関連の紛争は、メガバンクが関わっていることが圧倒的に多いです。

 何が問題かというと、こうしたトラブルの元であるリスク商品を、ほかならぬ融資先に売りつけることでしょう。独占禁止法で「優越的な地位の濫用」を禁止されているにもかかわらず、金融派生商品を立場の弱い融資先に売りつけている現実を見れば、筆者が「メガバンクには気をつけろ!」と言う理由がおわかりいただけると思います

 実例を挙げましょう。E社は資金繰りに窮し、全ての取引金融機関から借入金をリスケしていましたが、過去に契約した金融派生商品にからみ、毎月200万円近い営業外損失を計上していました。

 筆者のアドバイスで、当該商品を販売した取引銀行に断ったうえで中途解約を断行。金融ADR制度を全国銀行協会に申し立て、最終的には全損害額の15%相当額を銀行に負担させることで和解に成功しました。過去数年間に被った損失額は1億円弱に上ったので、和解金15%といっても総額1000万円にも上ります。

 ダメ元で始めたADRでしたが、予想以上の成果が挙げられました。読者の皆さんのなかに同じような問題を抱えた方がいらっしゃれば、一度取引金融機関への相談をお勧めします。

『社長! 御社は銀行からまだまだおカネを借りられますよ!』より)

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村上浩(むらかみ・ひろし)

株式会社リンクス代表取締役。
1985年大学卒業後、足利銀行に20年間勤務。17年間、複数の本支店で融資、債権回収業務に携わる。回収業務では、ゼネコンを中心にバブル期に大量に貸し付けた資金を回収した。
2002年、足利銀行がデフォルトを起こす直前、取引先の再生支援を目的に新設された「企業支援部」に配属、様々な再生手法を学ぶ。当時の栃木県は、企業再生件数が東京都に次ぐ(日本)国内2位であり、県内の地方銀行2行のうち1行、信用金庫10行のうち5行が国有化・統合された。そのような特殊な環境下で、中小企業の再生業務の経験を積む。
足利銀行デフォルト後も融資実務に携わるが、取引先再生支援の判断を機械的なスコアで決めることに違和感を覚える。貸出額10億円未満の中小・零細企業も事業再生の機会を与えられるべきだとし、企業支援部時代の同僚と、再生コンサルタント集団「リンクス」を2006年に創業。クライアントの半分が「破たん懸念先」か「実質破たん先」のどちらかという過酷な環境の中、200社以上のうち150社の再生に成功。産経新聞、日本経済新聞(栃木版)などメディア掲載多数。


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