ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
辻広雅文 プリズム+one

「増税による経済成長論」に見る菅財務相の危うさ、民主党政権の宿痾

辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]
【第100回】 2010年4月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 菅直人・財務相がにわかに増税論者に転向し、「税収増を経済成長に結びつける」のだと意気込んでいる。

 その論理を説明すれば、
1.消費税率の引上げによって税収を拡大、
2.その税収を財源にして介護や環境などの成長分野に投資、
3.雇用が創出され、所得増につながる、
という展開になる。

 本人は、「税と財政出動によっておカネの潤沢な循環をもたらし、第二のケインズ革命を起こす」と宣言するほどの入れ込みようだ。

 だが、首をかしげざるを得ない。

 菅財務相の念頭にあると見られる「介護分野」を例に、考えてみよう。介護を含む社会保障予算は少子高齢化とともに急拡大し、毎年およそ1兆円ずつ増加している。その給付財源は赤字国債の発行で確保している。菅財務相は今回、増税による税収を赤字の穴埋めに使うのではなく、新たな財源として、さらなる給付を行なうために使うと主張している。従って、増税によって財政収支が改善し、財政再建につながるわけではない。これが、第一の問題である。

 第二の問題は、介護という社会保障分野そのものにある。

 日本社会において介護を必要とする人々が急増することはが明白であり、ずいぶん前から介護事業の強化の必要性が指摘されてきた。「コンクリートから人へ」という合言葉を掲げる民主党が政権を取ってからは、とりわけ介護事業は箱物公共事業中心の財政出動脱却の象徴とされてきた。少子高齢化社会の必須かつ成長を見込める事業として、財政資金投入の最優先分野に挙げられてきた。政府だけでなく、メディアの論調もそうしたものだった。「これからはワイズスペンディング(賢い歳出)を工夫し、介護事業などに注力すべきだ」などというように。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。


辻広雅文 プリズム+one

政治・経済だけではなく、社会問題にいたるまで、辻広雅文が独自の視点で鋭く斬る。旬のテーマを徹底解説、注目の連載です。

「辻広雅文 プリズム+one」

⇒バックナンバー一覧