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家族や友だちに今、自慢できる会社が 果たして将来も 有望な就職先といえるのか?

家族や友だちに今、自慢できる会社が
果たして将来も有望な
就職先といえるのか?

著者・コラム紹介

昨今の新卒採用は学生優位の「売り手市場」と言われながら、採用ルールの見直しによる選考期間の短期化や、就職情報サイトの肥大化に企業・学生双方が翻弄される中、就活生にとって未来を見据えた会社の選び方とはどうあるべきなのか。国内外でベンチャー経営者300名以上のインタビューを手掛け、『これから働くならこれからの会社でしょ』(ダイヤモンド社)を上梓した、「ストーリーズ」代表の垣畑光哉氏に「これからの会社」の選び方を聞いた。

 好調な企業業績を背景に学生優位の「売り手市場」が続いている昨今。2016年卒業生から変更された経団連の採用ルールにより、採用広報開始の時期は、「3年生の3月」へ、選考開始は「4年生の8月」へ3ヵ月も後ろ倒しとなり、大手企業に知名度で劣る中小・ベンチャーは苦戦を余儀なくされています。

苦戦を余儀なくされている
ベンチャーの採用戦線は

垣畑光哉
「ストーリーズ」代表

大学卒業後、外資系金融機関勤務を経て、2001年にマネーコンフォートを創業。広告の企画制作や企業ブランディングに関わる一方、近年は各分野のプロや成長企業トップへの取材をコンテンツ化するプロジェクト「ストーリーズ」を推進。著書に『10年後に後悔しない働き方 ベンチャー企業という選択』『メンター的起業家に訊く 20代に何をする?』(すべて幻冬舎刊)などがある。

 そもそも、アベノミクス「第3の矢」である成長戦略では「産業の新陳代謝とベンチャーの加速」が政策の柱と謳われながら、実際には未だベンチャーに対する認知は低く、皮肉なことに就活生の大手企業志向はアベノミクス以降、むしろ高まっている格好です。

 一方で、就活期間の短期化により、早い時期から中小・ベンチャーもターゲットに企業研究を進める堅実な学生が増えていたり、一億総中流時代とは異なるワーク&ライフスタイルが模索されていたり、世の中にイノベーションをもたらすベンチャーの存在意義は、以前にも増して高まっていると見ることもできます。

 では、学生優位の「売り手市場」が当の就活生にとってバラ色かといえば、そうとも言えない現実があります。

 就活解禁日は就活生にとってはすなわち、「就職情報サイトの一斉エントリーが解禁になる日」。出遅れてはならないとばかりに、ただやみくもに大量のエントリーを企業に送りつけるしかない就活生がエントリー先に選ぶのは、見たことや聞いたことのある企業、つまり人気企業や大手に偏ることになります。

 これまで受験を繰り返す中で、少しでも偏差値の高い学校や有名校に行きたいと願って勉強をしてきた学生にとって、“いい学校”へ行きたい理由は「親を喜ばせたい」「学校のみんなから認められたい」といった部分も大きかったはずです。

「就職人気企業ランキング」上位企業に就職しても
将来が約束されたわけではない

 高校、大学まではそれでもよかったのかも知れません。でも、就職はどうでしょう。例えば、毎年、就活時期にメディアを賑わせている「就職人気企業ランキング」などは偏差値に代わる指標の一つかも知れませんが、それはこれから就職をしようとしている学生による人気投票です。

 企業を判断する材料は、「社名を知っているから」程度ではないでしょうか。つまりそれは、TVCMでよく見かけたり、消費者として商品に馴染みがあったりする企業を選んでいるに過ぎず、ランキング上位の企業に就職したところで、親や友だちに「いい会社に入ったね」と言ってもらえるだけで、将来が約束されたわけでは決してないのです。

 そして何より、時代の移り変わりとともにこのランキングは激しく入れ替わります。誰もが一生安泰だと思っていた電力会社や、将来性があると人気だった家電メーカーなど、10年前には考えられないくらい様変わりした企業はいくつも思い浮かぶはずです。

 今現在、世の中によく知られ、輝いているように見える企業に入ったからといって「勝ち組」といえる時代は、もうとっくに終わったのです。

ベンチャー企業こそが
日本の雇用の多くを創出している

 「企業には、全て誕生の瞬間がある。起業後間もない揺籃期の企業は、無限の可能性に満ちた存在である。起業家は、その才能を十二分に発揮して多様な企業を創出し、市場にイノベーションをもたらすとともに、多数の雇用を創出する。こうした起業家の積極果敢な挑戦が、産業構造に絶え間ない新陳代謝をもたらして経済成長を牽引し、多様な経済社会を創造していく。」

 これは中小企業庁による『中小企業白書 2011』の第3部「経済成長を実現する中小企業」冒頭の一文です。この白書では「2004~2006年に創出された雇用の約6割は、開業事業所で創出されている」「起業が雇用創出に重要な役割を果たしている」という分析がされ、若いメンバーで構成されたベンチャー企業こそが日本における雇用の多くを創出していると評しています。

 考えてもみてください。日本の戦後復興を支え、経済成長の原動力となったのは、パナソニックやソニー、本田技研工業といった当時の新興企業であり、それらは松下幸之助、井深大や盛田昭夫、本田宗一郎といった起業家によって町工場から世界的な企業へと成長を遂げていったのです。

 残念ながら戦後日本を支えた往時の成長企業も、今やそのピークをとっくに越え、凋落傾向は否めません。では、これから羽ばたこうとしている若者にとって、ビジネスパーソンとしてのピークはいつなのか。それは決して、就職しようとしている今ではないはずです。

 先の長い自分の生涯価値を投じるのに相応しいのはどんな企業なのか。それは知名度でも、業歴でも、規模感でもなく、将来の可能性を感じられるか、これに尽きます。その可能性を目利きするのは、親でも先生でもなく、ましてや就職情報サイトでもなく、自分自身です。

 つまり「これからの会社」を選ぶには、他人の反応やネット上の評価に惑わされることなく、結局は会社に足を運んで、経営トップの生の声に耳を傾けるしかありません。これからは企業も学生も、顔の見えないネットオンリーの空中戦から脱却して、地に足の着いたフェイストゥフェイスの地上戦が重要なのではないでしょうか。


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