シリコンバレーでは、アップルとグーグルの対抗姿勢が、日に日に高まっているのが肌で感じられる。先頃、それをさらに際立たせるような出来事が起こった。グーグルが新手のマルチタッチ技術開発会社を買収したのだ。

 その会社は「BumpTop(バンプトップ)」。カナダで2007年に創設されたばかりの新興企業だ。グーグルはここ最近、すさまじい勢いで新興の技術開発会社を買収しまくっているが、その触手はアメリカ国内にとどまらない。最近の数ヵ月だけでも、イギリスの画像検索会社、イスラエルのアプリ開発会社などを買収しており、バンプトップも世界中をサーチするグーグル買収陣の目に留まったわけだ。

 バンプトップの買収が、アップルvs.グーグルの構図をさらに強める理由は、バンプトップが開発するマルチタッチ技術が現在のiPhoneやiPadの先をいくものだからである。バンプトップの技術は「3Dデスクトップ」と呼ばれている。その名の通りバンプトップはコンピュータのスクリーンを、まるで本物のデスクのように手で触れられる3次元空間に変えてしまうのである。

 たとえば、スクリーンの上には、ドキュメントや写真などのファイルが散らかっているとしよう。バンプトップのソフトを用いると、手先の操作でそれをデスクの端へ寄せたり、きれいに並べたり、開いて中身を確かめたりすることができる。それだけではない。両手を用いて写真をトリミングしたり、ドキュメントをデスクの前の壁に貼り付けたりすることも可能だ。

 現在のマルチタッチ技術では、せいぜい2本の指でスクリーンを拡大・縮小したり、タップしてアプリを起動したりできるだけだが、バンプトップのマルチタッチには、もっとたくさんの操作手順がある。それを使うと、まるで生の手でデスク上のモノを動かしているように直感的に感じられるうえ、平面だけでなく3Dの空間の広がりまであるというものなのだ。