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美人のもと

早足

西村ヤスロウ [広告プランナー]
【第61回】 2010年5月10日
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 颯爽と歩く。その姿はきれいだと思う。美しい姿勢で歩いている人を見ているとそれだけで気持がいい。美人は颯爽とした歩き方ができる。

 そして、美人は早足がうまい。急いでいる時に冷静さを持っている感じだ。さりげなく急いでいる。誰だって急ぐ時はある。駅へ急ぐ。会議に急ぐ。待ち合わせの場に急ぐ。乗り換えの電車に急ぐ。事情はいろいろあるが、急ぎ方が大げさでないのだ。足を動かす速度がやや速くなる。歩幅が大きくなる。それだけでも速度は上がる。さりげなく速度を上げる。通常の歩き方からさりげなく切り替えができている。通常の速度に戻す時もさりげない。変化に滑らかさがあるのだ。

 ここで重要なのは、意味のない小走りにしないことだ。もちろん走る必要がある時は走る。目的地までの時間短縮のために走る。真剣に走る。口を結んで走る。その真剣さを見れば、周囲も気遣って進路を開けてくれたり、なんらかのサポートをしてくれたりする。音を立てないのにサイレンを鳴らす救急車扱いだ。

 一方で早足下手がいる。速度変化に滑らかさがなく、急に速度を上げたり下げたり。そしてとにかく小走りが多い。速く歩くではなく、走る。ここで走るかという場所で走る。例えばスーパーのレジ。空いている列にむけて走る。デパートのエレベーター。走って乗る。飛行機を降りたらすぐ走る。なぜかそういう人の荷物はなかなか出てこないのに。

 そしてその小走りを見ていると、速度が上がっていないことが多い。たしかに足を動かす速度は上がっている。体も上下動する。しかし歩幅が狭くなっているように見える。ちょこちょこしている感じだ。実は意味がない。

 結局、落ち着きがないだけなのだ。バタバタ音を立てて、騒がしい。だから小走りさんは人にぶつかる。ぶつかっても謝らない。気づいていないことも多いからだ。気づいてもあやまる余裕もない。目的はレジで並ぶ時間をちょっと短くしたいという程度のものなのに、必死。そして、その落ち着きのなさを隠そうとして、たいてい不自然な笑い方をしている。駆け込み乗車の人によくある歪んだ笑顔だ。「美人のもと」が減る瞬間だ。

 さりげない早足。それは人をキリリとさせる。それが「美人のもと」を生んでいるように思う。

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西村ヤスロウ [広告プランナー]

1962年生まれ。プランナー。趣味は人間観察。著書に『Are You Yellow Monkey?』『しぐさの解読 彼女はなぜフグになるのか』などがある。


美人のもと

『経』に好評連載中の西村ヤスロウ氏によるエッセイ。「美人のもと」とは、女性なら誰しも持っているもの、「美人のもと」を磨き続けるためのコツを解き明かす。

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