10月21日、中国の国策ファンド紫光集団が15%の株式取得を表明している米ウェスタン・デジタル(WD)が、東芝とNANDフラッシュメモリ事業で合弁を組む米サンディスクの買収を発表した。折しも不正会計騒動で過去の経営陣の提訴などで揺れる東芝。だが、“火の手”は別の方向からも上がり始めている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

2014年9月、東芝四日市工場で新工場棟の竣工を鏡開きで祝うサンジェイ・メイロトラ・サンディスクCEO(左)と田中久雄・東芝社長(当時)(中)。1年後の事態を誰が想像しただろう Photo by Yoko Suzuki

「私の投資方針は『飢えた虎が肉にかみつくように早く行動する』こと。半導体メモリ分野を研究し、参入するための道を探る」──。

 7月にDRAM世界3位の米マイクロンテクノロジーの買収に動き、9月にはHDD世界1位の米ウェスタン・デジタル(WD)に15%の資本参加を決めた中国国策ファンドの紫光集団。趙郭魏CEOは米メディアのインタビューで自信たっぷりにこう言い切った。

 マイクロン買収交渉は現在、米国の政治的圧力で中断中だが、一方で台湾のDRAMメーカー、南亜科技の前社長でマイクロンと同社の合弁企業会長の高啓全氏を引き抜きに動くなど、執拗な取り込み工作を続けている。

 これだけではない。彼らの次なる照準は、東芝および米サンディスクコーポレーションに合わせられている──といううわさが半導体業界ではささやかれ始めた。

 韓国サムスン電子、東芝、サンディスクで世界市場の70%を占めるNANDフラッシュメモリの“買い手”の25%は中国企業だ。現在そのほとんどを輸入に頼る中国は、貿易赤字縮小のため国策としてメモリの国産化を進める。紫光の動きは、明らかにその流れだ。

 紫光がWDへの資本参加を決めた3週間後の10月21日、WDはその資金を元手としてサンディスクを190億ドル(約2兆2778億円)で買収すると発表した。

「15%の出資があれば、紫光はWDに取締役を派遣し、子会社のサンディスクの重要経営事項に関わることができるようになる」(大山聡・IHSグローバル主席アナリスト)。サンディスクは東芝と共同出資し、三重・四日市工場で生産・開発を展開するが、紫光は親会社としてここで“メモリ事業の研究”に参加できるわけだ。