スマートフォンの普及によって、「家電の王様」の地位を奪われつつあるテレビ。『週刊ダイヤモンド』11月14日号第1特集「誰がテレビを殺すのか」では、フジテレビを中心としてテレビ局の行く末を占ったが、一方で地上波の受信機として主に機能してきたテレビは、今後どう変わっていくのか。事業戦略を含めたテレビの未来について、ソニーとパナソニックの統括担当役員である、ソニービジュアルプロダクツの高木一郎社長、パナソニックの吉田守常務役員の2人に話を聞いた。(聞き手/『週刊ダイヤモンド』編集部・中村正毅)
ソニービジュアルプロダクツ高木一郎社長
「映像デバイスの多様化に柔軟に対応する」
ソニービジュアルプロダクツ社長。1981年慶大工卒、ソニーに入社。2011年業務執行役員SVP。14年ソニービジュアルプロダクツ副社長。15年4月から現職
――2014年度に、テレビ事業がソニーとして11年ぶりに黒字転換しました。要因についてはどう分析していますか。
高木(以下同) 黒字化には大きく3つ要因があります。人件費などの削減による事業の損益分岐点の引き下げ、商品力の強化、そして販売力の強化です。特に販売では、米家電量販大手のベストバイと組んで、約370店舗に『ショップ・イン・ショップ』のかたちで売り場を展開したことで、着実に売り上げ増につながっています。
――他の電機メーカーが北米での事業規模縮小に動く中で、ソニーが勝負を続ける理由は何ですか。
現在市場の8割を占めている低価格モデルを主戦場にすると、メーカーとしては苦しいですよね。我々はそこに目を向けるのではなく、あくまで残り2割の高価格帯、プレミアムゾーンを狙っているわけです。
低価格帯で攻勢をかけている中国勢の商品を見ると、同じ4Kテレビでも画像処理の技術が追いついていないのではないかと感じるときがあります。我々のテレビには、画質を上げるアップコンバージョンの能力や色の再現性においても、他のメーカーに比べて一日の長があります。プレミアムの市場で勝負できるそうした機能をしっかりと備えていることが、現在の評価につながっているのではないでしょうか。