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安東泰志の真・金融立国論

銀行の都合で事業再生計画が頓挫する理不尽

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第63回】 2015年11月11日
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事業再生には金融債権者の協力が不可欠。だが難色を示す銀行が必ず現れる

 社会的意義がある企業の事業再生を進めようとする際に、ほとんどのケースで必要になるのが、債権者にいったん痛みを引き受けてもらう作業だ。とりわけ、銀行など金融債権者には協力を要請せざるを得ないことが多いのだが、この際に、すべての金融債権者が同意しないと先に進めないことが事業再生を遅らせる原因となる場合が多く、長年の課題となっていた。

 最近、この問題を解決するために、多数決で再生支援を決められる仕組みが模索されており、事業再生の救世主になる可能性がある。

救うべき事業を再生させるための
債権カットは銀行の「使命」でもある

 筆者は、国内外で長年にわたって事業再生に取り組んできた、いわばエキスパートであると自負している。もちろん、経済は企業や事業の新陳代謝がなければ活性化しない。だが、きちんとテコ入れすればまだ十分に社会的存在価値がある企業や事業(以下、まとめて「事業」という)が、一時の経営判断の誤りに起因する財務的な傷みのせいで失われ、まじめに働いている社員が路頭に迷うのは社会的損失だ。

 こうした事業を救うためには、過去の経営判断の誤りによって抱え込んだ負債を、いったん軽減してもらわなければならないことが多い。

 借りたカネを返すのは当然だという意見もあろうが、それは時と場合による。そもそも銀行は、資金仲介を通して利ざやを稼ぐ商売だ。中でも、貸出業務は、「通常の状態で確率的に予想される貸倒れ損失」に基づいて利ざやを決め、「不況期など異常事態が起きた際の備え」として自己資本を積むことで成立している。

 つまるところ、銀行にとって、一定の数の貸倒れが起きることは想定の範囲内なのであって、その損失は他の貸出の利ざやでカバーされているという点で、保険業に似た性質だと言って差し支えない。つまり、利ざやは保険料、貸倒れは保険金の支払いだ。そうだとすれば、銀行が社会的に存在価値のある事業を救うために債権カットを行い、貸倒れ(正確には「与信関連費用」という)が発生したとしても、それは公共的使命を果たすことが期待されている銀行にとって、むしろ当然の役割だと言っても過言ではない。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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