ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

どう計算しても年金は2032年に破綻する。
財政検証のゴマカシを剥いだ真実の姿

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第73回】 2010年6月5日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 厚生年金の加入者(保険料納付者)と受給者の推移は、【図表1】と【図表2】に示すとおりである。

 2010年を1とする指数で見ると、2040年において、受給者は1.22に増加する反面で、保険料納付者は0.8に減少する。日本における年金の問題とは、結局、今後30年の間に、保険料納付者が8割に減り、他方で受給者が2割以上増えるということに集約されているのである。

 これですら楽観的な見通しである可能性もある。まず、製造業の海外移転が進んだり、厚生年金に加入しない非正規労働者の比率が増えたりすれば、加入者数はさらに減少するだろう。他方で、年金額のデフレスライドやマクロ経済スライドが完全に実施されなければ、年金の所得代替率が上昇するため、年金受給年齢に達した後は就業を続けて在職老齢年金の制約で年金をカットされるよりは、就業せずに年金をフルに受給することが有利になるだろう。これは、受給者数をさらに増やす可能性がある。

マクロ経済スライドや保険料率引き上げでは
対処できないはずなのだが

 こうした事態に対して、日本の年金制度は適切に対処しているとは考えられない。

 まず、加入者の減少と受給者の増加に対処するため、「マクロ経済スライド」の制度が導入された。ただし、毎年0.9%程度の年金額削減を2023年度まで続けることとされているだけなので、将来の年金額を11%程度削減する効果しかない。受給者は2040年度には現在の1.22倍になるので、他の条件が変わらなければ、給付総額は現在より8.5%増加するはずである。

 他方で、保険料率は現在の16%から18.3%へ引き上げられるとされている。しかし、保険料納付者が8割に減少するため、賃金上昇がなければ、保険料収入は2040年度には現在の91.5%に減少するはずである。

 だから、厚生年金制度の収支は悪化し、現在144兆円ある積立金は、どこかの時点で枯渇するはずなのである。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
消費税だけでは財政再建できない!「日本を破滅から救うための経済学」

経済論争の最大のトピック=デフレ問題から、赤字国債発行の問題点、年金の破綻、消費税増税、円安誘導の為替政策まで、主要論点を網羅。いずれのテーマでも、通説と一線を画す内容に驚愕すること必至。綿密なデータの読み込みに裏付けられた、野口教授のマクロ経済政策論!1680円(税込)

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

突如として世界中を襲った経済危機。激流に翻弄される日本経済はどうなってしまうのか? なすべき対策はあるのか? 100年に1度の未曾有の事態を冷静に分析し、処方箋を提示する野口悠紀雄の緊急連載!

「野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む」

⇒バックナンバー一覧