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歴史に学ぶ「日本リバイバル」 松元崇(元内閣府事務次官、第一生命経済研究所特別顧問)

明治の神戸港が横浜港を破って「日本一」になれた理由

民間主導の殖産興業政策に地域活性化のヒントを学ぶ

松元 崇 [元内閣府事務次官/第一生命経済研究所特別顧問]
【第8回】 2015年12月22日
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日本で最初に開港したのは横浜港だが、明治期の日本で横浜港を破って日本一の座にあったのは神戸港だったことを、ご存じだろうか

前回、地方主導の地域活性化として、大阪港築港をご紹介した。実は、港として最初に開港したのは横浜港であり、横浜については相当に政府のテコ入れもあって、東京の玄関としての港湾整備が行われた。しかしながら、それに対抗して日本一の港となっていったのは神戸港であり、大阪港と一体となって関西圏の経済発展を支えた。その背景には、明治時代の殖産興業政策が民間活力を基本とするものだったという理由があったのだ。

実は民間主導だった
明治の殖産興業政策

 明治政府が富国強兵を唱えたことから、明治時代の殖産興業政策は官主導で中央集権的に行われたと思われている人が多いだろうが、事実は異なっている。明治維新期の政府は外交や防衛、それに国家としての最低限の姿をつくり上げるのに手一杯で、内政面、すなわち殖産興業といった分野は基本的に地方や民間任せであった。

 明治維新政府が、殖産興業政策を基本的に地方に任せたのは、当時の地方の経済力が強かったからであった。それは、明治維新が薩摩藩や長州藩という地方の藩の力で成し遂げられたことを考えればわかることである。

 ペリー来航の10年余り前、1840年から42年のアヘン戦争での清国の敗北が伝えられると、それまでも外国船来航に直面することが多く危機感を持っていた西南雄藩が、西欧の技術導入に努めることになる。そして、軍備まで近代化して、戊辰戦争になり、明治維新になった。

 この7月に世界歴史遺産に登録された明治日本の産業革命遺産の中に、鹿児島の集成館というものが入っていたが、それは当時、薩摩藩主だった島津斉彬が、黒船来航の2年前となる1851年(嘉永4年)、欧米列強に対抗するための軍事強化と産業育成を図ろうとして設けたもの。薩摩藩は、そこで製鉄・造船・紡績など幅広い分野での近代産業導入を試みた。何故、薩摩藩にそんなことができたのかというと、当時の薩摩藩には、それだけの財政力があったからである。

 薩摩藩といった西南雄藩に限らず、江戸時代には、それぞれの藩は相当の経済力を持ち、地域ごとに活力に満ちた経済活動、文化活動を展開していた。そのことは、今日に引き継がれている各地のお祭りの華やかさを見ても、明らかだ。

 実は、明治維新期になっても、地方の方が東京よりも強い経済力を持っていた。明治23年に第1回の帝国議会議員選挙が行われたが、そのときの有権者数は、東京よりも新潟県などの方が多かった。当時の有権者は、直接国税15円以上の納税者だったが、東京よりも新潟県などの方が、経済力があったということだ。当時の日本は農業国家だったので、米どころの新潟県などの方が東京より強い経済力を持っていたことは、当たり前といえば当たり前だった。

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松元 崇 [元内閣府事務次官/第一生命経済研究所特別顧問]

まつもと・たかし/株式会社第一生命経済研究所特別顧問、日本ボート協会理事。1952年生まれ。鹿児島県出身。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営大学院修了。1976年大蔵省(現財務省)入省。熊本県庁企画開発部長、大蔵省銀行局金融会社室長、主税局総務課主税企画官、財務省主計局次長などを経て内閣府に転じ、政策統括官(経済社会システム担当)、官房長、事務次官などを歴任。著書に『恐慌に立ち向かった男 高橋是清』(中公文庫)、『「持たざる国」への道-「あの戦争」と大日本帝国の破綻』 (中公文庫)、『高橋是清暗殺後の日本――「持たざる国」への道』(大蔵財務協会)、『山縣有朋の挫折――誰がための地方自治改革』( 日本経済新聞出版社)、『リスク・オン経済の衝撃』(日本経済新聞出版社)など。


歴史に学ぶ「日本リバイバル」 松元崇(元内閣府事務次官、第一生命経済研究所特別顧問)

日本はのるかそるか――。アベノミクスの信が問われるこの国は、まさに時代の岐路に立たされている。我々日本人は、政治、経済、社会の改革をどう見据え、新しい国づくりを考えて行けばいいのか。そのヒントは、近代日本を築き上げてきた先人たちの取り組みからも学び取ることができる。内閣府時代に新しい経済・社会システムづくりの知見を深め、歴史上のキーマンたちの姿を描いた著書を通じてわが国の課題を問い続ける著者が、「日本リバイバル」への提言を行う。

「歴史に学ぶ「日本リバイバル」 松元崇(元内閣府事務次官、第一生命経済研究所特別顧問)」

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