日本では第4次中国ブームが到来したと騒がれている。あたかもこの第4次中国進出ブームを象徴するかのように、埼玉県が今年11月、上海に事務所を開設する予定だ。中国への進出を視野に入れる県下の中小メーカーを中心にサポートするという。
「経済が下降する中で、日本国内だけ見ていたのでは難しくなりました」と、埼玉県庁企業立地課はコメントする。
日本の地方自治体が集中して上海に拠点を構えたのは、2004年を前後してのことだ。すでに20を超える自治体が上海事務所を持ち、貿易や対中進出、市場開拓のみならず、昨今では多くの自治体が観光誘致に力を入れている。
それに対し、開設を予定する埼玉県事務所は観光誘致ではなく、中小メーカーのサポートがメーンの業務。「製造業は出尽くした」と言われる中国進出において、時期を外し、時流を外したかのようにも映る。
「そろそろヤバイぞ」と
中国進出に重い腰を上げる
埼玉県の企業は24万7000事業所(06年時点)、うち99%が製造業を中心とした中小企業だ。埼玉県は製造品出荷額で全国7位。上位は愛知県、神奈川県、静岡県と海岸に立地する装置型産業が多いが、内陸の埼玉県は自動車部品や光学機械機器、レンズ製造の精密機器など、技術で勝負する中小メーカーが集積している。
他方、中国に事務所・法人を持つ埼玉県の企業は138、上海においては48社が拠点を構えるにとどまっており、これまでほとんど中国には目を向けてこなかった現実が垣間見られる。
ある埼玉県の部品メーカーはこれまでの“変遷”をこう語る。
「90年代は、客先から『中国に出るからついて来い』と声を掛けられても、『出たくない』というのが本音だった。ところが、2000年過ぎたあたりから、客先に誘われるのを今か、今かと心待ちにするようになった。それが今では、『なんとか自力で(日本を)脱出しなければ』と思うようになったのです」