今、なぜ歴史を学ぶことが
ブームになっているのか

ビジネスの大きな教訓は「歴史」から学べることも多い

 最近、「歴史を学ぶ」ことがブームのように見受けられます。背景の1つには、中近東情勢の不安定化や欧州への難民流入など、歴史を知らないとなかなか理解が難しい問題が増えていることもあるでしょう。

 今年最初に飛び込んできたニュースはサウジアラビアとイランの断交でしたが、多くの人は「なぜ?」とびっくりしたはずです。イスラム教のスンニ派とシーア派はどうやって分かれたのか、そもそもどんな違いがあるのか、どの国ではどの派が多数派、優位なのか――。こうした基礎知識は、そう簡単に身に着くものではありません。

「サイクス・ピコ協定」「オスマン帝国の版図」などが話題になると、随分専門的に聞こえますが、高校の世界史の教科書には必ず出てきます。「今年は歴史を学ぶ」を年頭決意にして、「○時間で学ぶ世界史」のような本を読むよりも、どっしり腰を据えて生涯の精進の課題にした方が良いような気がします。本来は、歴史の知識がないと、国際関係や国の制度などを理解するのはほとんど不可能です。特にビジネスに携る人々にとって、歴史は必修科目です。

 まずは高校の教科書をしっかり読み直して、関心のあるテーマごとに専門的な関係書に進んで行く方が、結局は身に着くのではないでしょうか。ここ数年、欧米の歴史学界では、第一次世界大戦から100年が経ったことを受けて、第一次大戦に至った歴史や社会の変容などについて、様々な新しい研究が発表されているようです。今の国際情勢が当時に類似する点が多いということから関心が高まっているのでしょう。たとえば、そうしたテーマについて色々と歴史を勉強するのもいいのかもしれません。

「賢者は歴史に学ぶ」
欧米の資本市場は重要なテーマ

 私が大学院で教える欧米の資本市場についても、歴史は非常に重要なテーマです。歴史を知らなければ、なぜそのような制度になっているのか、どうした問題が起こり得るのかをうまく理解できません。同時に、歴史を知ることによって学生たちは豊かな発想で今後へと考察を広げられます。まさにビスマルクの「愚者は経験に学ぶ、賢者は歴史に学ぶ」です。

 たとえば、学生の皆さんに、19世紀の半ばの英国で外国および植民地政府証券などに分散投資する世界最初の投資信託「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」が誕生したことを伝えると、彼らは瞬時に彼我の市場の厚みと蓄積の違いを理解できます。こうした事例は、現代日本における「貯蓄から投資へ」を考えるのにも大いに参考になります。