『週刊ダイヤモンド』1月23日号の第1特集は「使える!数学」です。ビジネスマンが身につけるべき素養、道具はいくつかあります。中でも最強、究極の武器となるものは何でしょう? それは数学である、と考えます。数学、算数が苦手な皆さんもぜひお読みださい。

数学がカネを生み
ビジネスを動かす

 2015年12月中旬、冬休みを前にした京都大学のキャンパス。理学部数学教室の伊藤哲史准教授(整数論)は、約50人の学生を前に、黒板いっぱいに数式を書き込んでいた。

 教科は「線形代数」。理系の学部生だったら、いやでも取らなければならない数学の必修科目だ。だが、伊藤准教授がこう話すと、嫌々授業を受けていた学生たちの頭がふと上を向いた。

「ここに示したのが、実は、グーグルの検索エンジンに使われている数式なのです」

 まさか、こんなところに数学が使われているとは、思いも寄らなかったのだ。

 実は、伊藤准教授は10代のころからコンピュータにのめり込むマニアだった。1996年には、世界中の高校生がコンピュータのプログラミング能力を競い合う「国際情報五輪」に参加して、日本人初の金メダルに輝いた。そんなコンピュータ青年が感動したというのが、当時公開されたばかりの米グーグルの検索エンジンだった。

「多くの人が役に立たないと思っている数式を、新しいサービスに落とし込む発想を生んだ点で彼らは天才的でした」

 ページランク(PageRank)──。インターネット上にある無数のウェブページについて、重要性の高いものから上位に表示されるよう、数学的に算出するアルゴリズムの名称だ。

 ウェブページの「ページ」と、グーグル創業者の一人であるラリー・ペイジの「ペイジ」を駄じゃれのように掛け合わせたこの技術こそ、今や時価総額で59兆9100億円(1ドル=120円換算)という、世界を代表するテクノロジー企業の出発点になっていたのだ。

 巨万の富をもたらした検索エンジンの仕組みは、冒頭のように理系学生であれば、誰もが学ぶ数学で成り立っていたのだ。グーグルの慧眼は、急成長するインターネットの世界に、数学が応用できると「ピンときた」点にあるだろう。