1970年代の石油ショックのとき、日本経済は激しいインフレとマイナス成長に見舞われた。いま、原油をはじめとする資源の価格が低下している。つまり、逆の動きが生じている。したがって、本来であれば、経済が活況を呈さなければならないはずだ。
しかし、実際にはそうなっていない。それは、「輸入物価が上がると国内物価が上がるが、下がったときには下がらない」という非対称性があるためだ。資源価格の下落は、企業の内部留保に吸収されてしまっている。
経済の好循環を実現するには、国内物価を引き下げる必要がある。
GDPデフレーターは
国内物価が下がっていないことを示す
前回、資源価格が下落して日本の輸入物価指数が著しく下落しているにもかかわらず、消費者物価が十分に下落していないことを指摘した(「資源価格下落は日本への未曾有のボーナス」図表3)。
同じことは、GDPデフレーターを見ると、もっと明確に確認することができる。
本連載の第44回で説明したように、輸入はGDPの控除項目であるため、輸入物価が下落したとき国内物価にそれが反映されなければ、GDPデフレーターは上昇する。そして、国内の物価に反映されれば、GDPデフレーターは元の水準に戻る。
実際のデータを見ると、国内総生産と民間最終消費支出については図表1に、輸入については図表2に、それぞれ示すとおりである(実際のデータでは、国内総生産と民間最終消費支出のデフレーターは、2014年4~6月期に急上昇している。これは、消費税増税の影響だ。図表1では、この影響を除いてある)。
◆[図表1]国内総生産と民間最終消費支出のデフレーター
(資料)内閣府
◆[図表2]輸入のデフレーター
15年1~3月期に輸入デフレーターが大きく下落したにもかかわらず、最終消費のデフレーターはわずかに低下しただけだった。このため、GDPデフレーターはかなり顕著に上昇した。
これは、原材料価格の下落が、国内物価にほとんど反映されていないことを示すものだ。