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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

資源価格下落の利益が
企業の内部留保に吸収されている

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第47回】 2016年1月28日
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資源価格の下落により、多くの企業で利益が増大しているが…

 1970年代の石油ショックのとき、日本経済は激しいインフレとマイナス成長に見舞われた。いま、原油をはじめとする資源の価格が低下している。つまり、逆の動きが生じている。したがって、本来であれば、経済が活況を呈さなければならないはずだ。

 しかし、実際にはそうなっていない。それは、「輸入物価が上がると国内物価が上がるが、下がったときには下がらない」という非対称性があるためだ。資源価格の下落は、企業の内部留保に吸収されてしまっている。

 経済の好循環を実現するには、国内物価を引き下げる必要がある。

GDPデフレーターは
国内物価が下がっていないことを示す

 前回、資源価格が下落して日本の輸入物価指数が著しく下落しているにもかかわらず、消費者物価が十分に下落していないことを指摘した(「資源価格下落は日本への未曾有のボーナス」図表3)。

 同じことは、GDPデフレーターを見ると、もっと明確に確認することができる。

 本連載の第44回で説明したように、輸入はGDPの控除項目であるため、輸入物価が下落したとき国内物価にそれが反映されなければ、GDPデフレーターは上昇する。そして、国内の物価に反映されれば、GDPデフレーターは元の水準に戻る。

 実際のデータを見ると、国内総生産と民間最終消費支出については図表1に、輸入については図表2に、それぞれ示すとおりである(実際のデータでは、国内総生産と民間最終消費支出のデフレーターは、2014年4~6月期に急上昇している。これは、消費税増税の影響だ。図表1では、この影響を除いてある)。

◆[図表1]国内総生産と民間最終消費支出のデフレーター

(注)消費税増税の影響を除いてある
(資料)内閣府

◆[図表2]輸入のデフレーター

(資料)内閣府

 15年1~3月期に輸入デフレーターが大きく下落したにもかかわらず、最終消費のデフレーターはわずかに低下しただけだった。このため、GDPデフレーターはかなり顕著に上昇した。

 これは、原材料価格の下落が、国内物価にほとんど反映されていないことを示すものだ。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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