2014年と2015年、大分県別府市で、パチンコ店・競輪場を訪れていた生活保護利用者に対して、生活保護の停止(中断)という処分が行われた。
「よくやってくれた!」という賛辞も多数集まっている別府市の対応を、どう考えればよいのだろうか?
「ギャンブルの罰として生活保護停止」
大分県別府市で起こった出来事
※写真は本文と関係ありません
2015年12月15日、大分県別府市の市議会での一般質問において、驚くべき事実が明らかになった。
別府市福祉事務所は、2015年10月5日~30日の25日間、35名のケースワーカー(うち10人は非常勤)全員をそれぞれ延べ5日間動員し、市内の遊技場(パチンコ店13軒と市営競輪場)の巡回調査を行った。福祉事務所は、遊技場を訪れていた生活保護利用者25名に対して指導を行い、この期間に2回以上にわたって遊技場を訪れていた9人に対しては、生活保護を1~2ヵ月停止(中断)する処分を行った。この生活保護利用者たちは、「遊技場には立ち入らない」という内容を含む誓約書を、事前に別府市に提出していたという。
別府市は、「生活保護法第60条に基づく処分」であるとしており、3月までに同様の調査を再度行う予定であるという。また2016年度、ケースワーカーを増員して体制を強化する予定であるともいう(産経新聞報道など)。なお、ケースワーカー増員の目的が実際に「生活保護利用者のパチンコ競輪禁止」そのものなのかどうかは不明である。というのは、別府市のケースワーカー数は、社会福祉法で定められた定員を若干下回っているからだ。
この出来事は、賛否とも大きな反響を巻き起こしている。「よくやってくれた!」という賛辞もあれば、「パチンコ競輪が生活保護法違反なのではなくて、別府市の処分が生活保護法違反では?」という批判もある。
なお、発端となった一般質問(国実久夫議員による)と別府市役所による答弁は、まだ別府市議会の議事録には掲載されていないが、動画が公開されている。また1月6日に公開したYahoo!ニュース記事に、この動画から書き起こした質疑内容を掲載している。
長年にわたるケースワーカー歴を持ち、現在は公的扶助論の研究を行っている吉永純氏(花園大学教授)は、別府市の対応について「根拠に乏しいと言わざるを得ません」という。また、東京都内の生活保護の職場で働くベテラン・ケースワーカーの田川英信氏も、「別府市の動きは、正直、理解に苦しみます」という。
ケースワーカーとして、もちろん生活保護利用者のギャンブルでの浪費にも向き合ってきた吉永氏・田川氏のコメントを中心に、別府市での出来事を検討してみよう。