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シリコンバレーの超新星は
いまや疑惑だらけの“黒い星”か

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第376回】 2016年2月8日
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セラノスCEOのエリザベス・ホームズは、黒のタートルネックを着て「ジョブスの生まれ変わり」とまで言われた(画像はセラノスのホームページ https://www.theranos.com/より)

 超有望視されていたシリコンバレーのスタートアップが、危機に直面している。その名はセラノス。指先から採取する数滴の血液で、注射器数本分に相当する血液検査を行えると謳って注目を浴びていた企業である。

 セラノス(Theranos)は、医療業界を破壊する新しいメッドテックのスタートアップで、企業評価価値は何と90億ドル。近年は、企業価値が10億ドル以上の有望なスタートアップは、「ユニコーン」と呼ばれるが、同社はそれを大きく超える目の飛び出るような評価を得ていた。

 だが、その技術の不完全さに加えて、過大広告のようなマーケティング手法にも現在大きな疑問が集まっている。自らの技術の正当性を証明するまで資金が続くのかと、業界は注視している。

投資家を熱狂させる
全ての要素がそろっていた

 セラノスの物語は、現在のシリコンバレーのハイプやバブルを象徴したものでもあり、同時にスタートアップを持ち上げるメディアを含めた環境への警鐘でもある。

 セラノスには、スター扱いされる種々の要素が揃っていた。同社を2003年に創業したのは、当時19歳だったエリザベス・ホームズ。聡明で落ち着いた女性とも見える彼女は、スタンフォード大学を中退して起業し、たった数滴で、それも安価に血液検査ができることを謳った。

 同社には次々と資金が集まり、ベンチャーキャピタル大手のドレーパー・フィッシャー・ジャーベットソン、タコ・ベンチャーズの他、オラクル共同創設者のラリー・エリソンも投資家として関わっている。

 それに加えて、同社の信用性を印象づけたのは、社外役員の当初の顔ぶれだった。1970年代に国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー、クリントン政権時代に国防長官を務めたウィリアム・ペリー、労働省長官や国務長官を歴任したジョージ・シュルツらの名前が並び、それ以外にも海軍提督や上院議員などのそうそうたる面々がそろっている。

 同社は、ブレークスルー技術を持つ非の打ち所のないほどピカピカのスタートアップとして話題になり、創業者のホームズは黒いタートルネックに身を固めて、「スティーブ・ジョブズの再来」とまで騒がれたのである。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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