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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

政府の賃上げ要請や法人税減税で賃金は上がらない

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第40回】 2015年12月3日
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「なぜ賃金が上がらないのか?」に関する正確な理解が必要だ

 賃金所得の引き上げが経済政策の主要な課題となりつつある。

 この背景には、経済停滞がある。GDPが増えないのは、中期的に見れば消費が増えないからである。消費が増えない基本的な原因は、賃金所得が増えないことだ。では、どうすれば賃金を引き上げられるだろうか?

 これについて現在提案されていること、あるいは試みられていることは、どれも適切なものではない。この問題を考えるには、「なぜ賃金が上がらないのか?」に関する正確な理解が必要である。

経済停滞・消費低迷は
企業が人件費を減らしているため

 消費伸び悩みと人件費削減については、この連載の第38回第39回ですでに述べた。その結論を要約すると、つぎのとおりだ。

 最近の実質家計消費は、2012年頃に比べて減少気味だ(第38回の図表4参照)。その結果、実質GDPの成長率は中期的に見て低下している(第38回の図表3参照)。13年に日本経済が活況を呈したように見えたのは、消費税増税前の駆け込み需要と、政府支出の増加のためである(第38回の図表2参照)。

 以上のようになる基本的な原因は、賃金所得が減少していることである。そして、そうなるのは、企業が人件費を削減していることだ。

 法人企業統計によって、全産業、全規模で11、12年度平均と14年度を比較すると、企業利益は約30%増加した。また、売上高と売上原価が増加した。しかし、人件費は67兆円(率では3.9%)減少している(第39回の図表5参照)。

 状況は、業種や企業規模によって異なる。製造業の大企業では、売上増加は円安による円建て輸出売上の増加によるので、人件費が増えないのである(第39回の図表6参照)。

 製造業の中小企業では、売上高が減少しているので、人件費を削減することによって利益の減少を食い止めている。

 非製造業では、売上が伸びているのだから、それに比例して人件費が増えても不思議はない。実際、売上原価は売上に比例して増えている。しかし人件費が増えていない(第39回の図表7参照)。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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