HOME

メタボリック

肝臓

腰痛・肩こり

高血圧・高脂欠症

うつ・ストレス

ニオイ

薄毛

老化防止

禁煙

男の病気

「引きこもり」するオトナたち

「家庭=安らぎの場所」は本当なのか?
“フツーの人”も他人事ではない家庭崩壊の余波

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第26回】

「家のなかに頼れる人がいない」
家族全員が孤立した暮らし

 周囲に知られないよう、身を潜めるように暮らす「引きこもり」の当事者たちはよく、テレビのホームドラマを見ては、「ドラマのシーンに出てくる家庭像が、本当の家族の姿なのだろうか?」と困惑するという。

 10年にわたって引きこもっていた、神奈川県に住む20代の三浦可南子さん(仮名)の父親は、仕事ばかりで家の中ではまったく会話がなく、仕事の話ですら家族に愚痴をこぼすことは一切なかった。長女である可南子さんが、父親との会話で覚えているのは、「おはようございます」といった挨拶程度だ。

 可南子さんの両親は、とても不仲だった。父親は薬剤師。母親は専業主婦という家庭。母もまた攻撃的な性格で、大学を卒業した後に就職したものの、仕事が長続きしなかったという。

 やはり、2人とも社会的な付き合いが苦手だった。両親も、可南子さんと同じようなメカニズムを持っていたのかもしれない。

 父親は、大学受験で「5浪」した。開業医だった祖父の後を継いで欲しいという期待に応えようとして、何度も医学部を受けては落ち続けた、そんな団塊の世代だ。結局、倍率が激しかったため、医師になることは断念し、薬学部に入学。薬剤師になったという。

 薬剤師として、病院や薬局を2年に1度くらい転々とした。調合次第で命にかかわる仕事だけに、プレッシャーも強かったようだ。加南子さんが中学生のとき、いじめに遭っていて、相談したかった。悩みを聞いてほしくて、父親に話し始めると、いつも話の途中でフッといなくなる印象があった。

 といって、悩みを母親に話しかけると、チンプンカンプン。そんな家庭の中で、可南子さんは、生きづらさを感じていた。

 つらいことがあっても、家の中には、頼れる人がいない。可南子さんの家庭は皆、孤立していた。幼いながらも、「これは本当に家族なのか?」と疑問に感じ、両親への不信感に変わっていった。憎しみや嫌悪感もずっと重なっていった。

 友人たちの家庭には、仲睦まじく温かみのある「家族団欒」があるのに、自分の家庭には団欒がない。当事者の人たちは、テレビのホームドラマに描かれるような家族の姿がフツーだと思い込み、自分の家庭の現実との間にギャップを感じるという。

1 2 3 4 >>
このページの上へ

池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

⇒バックナンバー一覧