長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第23回】 2016年2月11日 樋口直哉 [小説家・料理人]

「一日三合の牛乳を飲むこと」をモットーに104歳まで生きた女性

 牛乳は体に悪いと近頃よく聞くけれども本当だろうか? これはあらゆる意味で真実ではない。東京都老人総合研究所の疫学調査によると、毎日牛乳を飲んでいる老人はそうでない場合に比べて長生きするという結果だった。また秋田県の調査によると血清総コレステロール値が上昇し、抑うつ傾向の予防が期待できるという。牛乳などの高栄養の食事も加藤シヅエの前向きな好奇心の源泉かもしれない。もちろん運動や外に出ることも健康には重要である。

 ただ、高齢者にとって望ましい食生活は粗食ではないことに注意したい。むしろ低栄養状態に気を付けるべきだ。厚生労働省でもマニュアルを作って改善を進めている。日本人の寿命が戦後から延び続けていることに、食の多様化による栄養状態の改善が寄与しているのは間違いない。今は食に関する情報が溢れている時代で、正しい情報と間違った意見の判別が難しい。加藤シヅエは「正しい人ほど頑固になる」と指摘をしているが、情報をうのみにせず選択する力を身に付けたい。加藤シヅエは何事も自分で決めてきた人物だった。長寿に必要なのは強い意志の力なのだ。

※参考文献/『百歳人 加藤シヅエ 生きる』、『百歳の幸福論』(共に加藤シヅエ著)

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

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