小山昇と「かばん持ち社長」との会話
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。
「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、600社以上の会員企業を指導しているほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回以上の講演・セミナーを開催。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』『強い会社の教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『99%の社長が知らない銀行とお金の話』『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(以上、あさ出版)、『【増補改訂版】仕事ができる人の心得』(CCC メディアハウス)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】 http://www.m-keiei.jp/
菊池 小山さんは、毎回、「なぜ午前9時前から銀行訪問」をしているのですか?
小山 午前中のほうが銀行も忙しくないし、時間をつくってもらいやすいからね。
菊池 だからといって、開店前から待つ必要はないのでは? 早すぎませんか?
小山 いや、1行目の訪問は、シャッターが上がる前から待つ。シャッターが上がって私が目の前にいれば、まっ先に挨拶ができる。支店長だって、悪い気はしないでしょう。
「銀行訪問成功」の5つのポイント
私は、定期的に「銀行訪問」を続けています。銀行から融資を受けたら、「そのお金をどのように使ったのか」を報告するのが当たり前だからです。
銀行には、わが社の現状(売上・経費・利益・今後の事業展開など)について、包み隠さずに報告しています。
では、私はどのように銀行訪問をしているのか。ポイントは次の「5つ」です。
1.訪問回数を多くする
回数が多いほど、銀行から信用されます。回数が多くなればなるほど、社長は「ウソがつけない」からです。
10年以上前まで、私は毎月、銀行訪問をしていました。現在は取引銀行の数が多くなったため、「3ヵ月に一度、定期訪問」しています(1日3行×3日間)。
2.幹部社員を同席させる
幹部社員が銀行交渉に同席していると、社内の組織改革も進みやすい。銀行交渉の内容を「社長」が社員に報告したときと、同席した「幹部」が社員に報告したときでは、社員は間違いなく、幹部の言うことを信じるからです。
3.訪問時間は、1行につき「20分以内」
多くの社長は「長く話すほど銀行は信頼してくれる」と思っていますが、そんなことはありません。コミュニケーションは回数です。同じ1時間でも「1回×1時間」より、「20分×3回」の訪問のほうが効果的です。
4.どの銀行にも、「同じ話」をする
同じ話をするからこそ、「この銀行はお金を貸したがっているのか」「本音では貸したくないのか」といった、銀行、支店、支店長の違いや変化をつかむことができます。
5.「悪いこと」も隠さない
多くの社長は、銀行に「よいこと」しか話したがりません。でも、たとえ赤字でも、「どうして赤字になったのか」「その赤字をなくすために、どのように対処していくつもりか」をきちんと報告できれば、銀行は支援してくれます。
株式会社ロジックスサービス(構内物流の請負業/宮城県)の菊池正則社長は、「かばん持ち」の最中に私の銀行訪問に同行しています。
その後、私のやり方をパクって、銀行との良好な関係を築いた。年4回、銀行訪問をするようになってから、「貸してください」から「借りてください」へ銀行の対応が変わったといいます。
「小山社長には、『支店長のお見送りの仕方を見れば、貸したいか、貸したくないか、わかる』と教わりました。ある地銀の支店長は、お金を貸したいときは、支店の外に出てお見送りをしてくれる。でも貸す気がないときは、店内の奥でお見送りする。定期的に銀行を訪れて定点観測をすれば、そんなこともわかってしまうのです」(菊池社長)
「毎月訪問する」と意気込んでも、よほど熱意のある社長でない限り、なかなか続きません。「小口の融資だからかえって負担になる」「毎月の訪問は荷が重い」のなら、「3~4ヵ月に1度」でもいいので銀行訪問することが大切です。
そして、ウソをつかず、会社の現状を社長が自ら報告する。定期的な報告こそ、銀行の信頼を得る最良のしくみです。