総務省の「2013年住調」が示した
「空き家820万戸、空き家率13.5%」は本当か?

 昨今、空き家問題が非常に高い社会的関心を呼んでいる。空き家は全国に約820万戸存在し、空き家率は全国平均で13.5%という数字が前提とされている。これらの数字は、総務省が2013年に行った住宅・土地統計調査(以下「住調」という)の結果であるが、筆者はこの住調の空き家に関する数値は過大に算出されているのではないか、と考えている。

そもそも空き家調査自体が困難を極める。数字の一人歩きは危険だ

 13年住調によると、筆者の住む世田谷区の空き家率は10.4%となっているが、世田谷区全域で10軒に1軒が空き家というのはにわかには信じがたく、そのような実感は筆者には全くない。

 住調では調査の方法について「空き家などの居住世帯のない住宅については、調査員が外観等から判断することにより、調査項目の一部について調査した」としており、そもそも非常に曖昧な判断基準によって空き家がカウントされている可能性がある。

 13年住調の結果が発表されるまでは、「08年に比べて空き家数・空き家率ともに大幅に上昇しているであろう」という予測が多かったが、実際には空き家数は全国で約62.7万戸の増加、空き家率はわずか0.4%の上昇であった。賃貸住宅に限ってみると、空き家数は約16.5万戸増加したものの、賃貸空き家率はわずかであるが0.03%下降している。

 そして、東京23区の賃貸空き家率を08年と13年で比較すると下図のようになる。


 千代田区では36.5%(!)だった賃貸空き家率が、「わずか」5年間で、16.3%と20.3ポイントも下落し、同様に中央区(27.7%→12.4%、▲15.2ポイント)、目黒区(28.2%→14.9%、▲15.3ポイント)、中野区(9.9%→18.8%、+8.9ポイント)といった「不自然な」、「現実的にはあり得ないような」大きな変動が、数十万人が居住している広大な地域で起きている。

 これらの不自然な空き家率の変動は、オートロック付きでセキュリティの厳しいタワーマンション等の空き家を「外観等から判断」して把握することが極めて困難で、調査結果に大きな誤差を含んでいることを強く示唆している。