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日本に巣食う「学歴病」の正体

学歴で「身のほど」をわきまえ人生に線引きする、哀しき若者たち

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第11回】 2016年3月22日
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 今回は、学歴病が新卒時から20代後半くらいまでの「若い世代」の意識に与える影響について考えたい。一昔前まで学歴は、社会において個人に「身のほど」を知らせるツールの役目を果たしていた。時代は変わったとはいえ、依然としてそうした意識は根強く残っているように思える。それが国や社会の成長さえも阻害している可能性があることに対して、問題提起をしたい。

筆者が専門学校で目にした
若手社会人たちの「学歴格差」

以前、筆者が入社試験の論文を教えていた専門学校では、出身大学の偏差値によって若者たちの進路に大きな差が見られた。彼らの心の中には「学歴病」が根を張っていた

 筆者は2006~09年のあいだ、いくつかの専門学校で、主に大卒の若者たちに向け、企業の採用試験対策として「論作文の書き方」などを教えていた。そのとき、ある学校で感じたことを紹介する。そこには、大学などを卒業し、社会人になった後、編集者として出版社への転職を希望する受講生が多かった。

 本人たちが話していた限りでは、新卒時の就職活動では思い描いた結果を得られなかったようだ。「不本意入社」でメーカーや金融機関、商社などに就職したものの、早々に辞めたいと思い、転職を目指してこの学校に入学したという。1年間に在籍していたのは数百人で、各々会社に在籍しながら、週に1~2日のペースで、数ヵ月から半年ほど受講していた。

 入校時に本人が書くプロフィールシートの最終学歴の欄を見ると、2つのグループに分けられると思った。1つ(Aグループとする)は、入学難易度が一定以上のレベルを超える大学・学部を卒業した人たちだ。主なものは、次のような大学・学部だった(ランクは2006~07年当時)。

 一橋大学社会学部、横浜国大経済学部、東京学芸大教育学部、広島大文学部、北海道大文学部、東京外国語大(学部不明)、早稲田大法学部・第一文学部・教育学部、中央大法学部、青山学院大国際政経学部・経済学部・文学部、立教大文学部、同志社大文学部大学院修士、関西大文学部――。

 もう1つのグループ(Bグループとする)は、ここ二十数年の間に新設された大学や、知名度があまりない大学の卒業者たちだった。

 全受講生の中でのA・Bグループの比率は「7:3」。全受講生の平均年齢は20代後半。男女の比率は、「4:6」。この2つのグル―プの人たちは、出版社の採用試験のとき、「学歴病」の症状とも言える行動をとり始めた。筆者が強い印象を受けた、そのあたりのエピソードを中心に紹介しよう。

 「一流」と言われる大手出版社5~6社は、2006~09年頃、新卒時の年齢制限を24~25歳にしていることが多かった。この専門学校の受講生たちのほとんどが、その年齢をオーバーしている。したがって、受験することができない。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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